3/9 (水) 0:30 いつもの二人に・・・

今度は貴くんから電話がかかってきた。

“舞、今後モーリスからメールや電話が来ても無視するように、分かったね”

・・・いつの間にバレていたの?

“アイツも、舞を悩ませていた要因の一つだったんだね、悪かったよ。厳しく叱っておいたから許してくれないかな?”

厳しく叱ったって?・・・というか、これまでの経緯を教えてよ。

“え?だってアイツが余計なことをボロッとこぼすから、突っ込まないわけにはいかなくなったんだよ。ああいう男にはガツンと言ってやらないと、また後で面倒なことになるから・・・”

「だったら、謝らなきゃいけないのは私のほうよ。忙しい貴くんの手を煩わせてしまったわけで・・・」

“でもこれ以上二人の関係が深くなっても困るじゃないか。気づかなかった僕がバカだったよ”

・・・とても疲れた声。だって、貴くんが怒るところなんて私ですら想像できない図だし、それだけ多くのエネルギーを使ったってことだよね。でも、ちゃんとやきもちを焼いてくれるんだということに感動。

「いいよ。今回のことは私のほうも悪かったわけだし、しばらく忘れようよ」

“そうだね。アイツのせいで疲れているのもバカバカしいからね”

「・・・ねえ、貴くん」

“何?”

「貴くんには、女性の影が見えないんだって」

“何それ?”

よかった。笑ってくれた。私のことを心配してくれたお返しに、少しでもリラックスしてもらわないと、と思って、この間同僚から聞いた話をしてみた。

“僕的には、響殿下は女性と親しくしすぎ、と思われているに違いないと思っていたから驚きだね。・・・でも舞はそんなこと思ってないでしょ”

「その通り!」

“よかった。舞には見る目があって”

「よくないわよ。貴くんは気が多いから、心配してるのよ」

“じゃあ聞くけど、僕が浮気なんてしたことあった?”

・・・何よ、今度は急に開き直っちゃって。

「一緒にいないから分からないよ。そんなことはない、と信じるだけ」

“あ・・・ごめん”

あ・・・、私の方こそ、落ち込ませるつもりはなくて・・・。

「でも女の勘では、そう感じたことはないわ」

“もちろんだよ。僕には君だけで精一杯だから”

・・・電話を切る頃には、モーリス殿下のことはすっかり忘れてしまっていた。

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