テレビでは各局開票速報が始まり、宮殿の対策本部にも情報や人が激しく出入りしている。
そしてやはり、この貴重な機会を逃してはいけないと思って、沢渡くんにはその一部始終を見届けてもらうことにした。今回マスコミはここまで入れないので、僕の近くで時々手伝いながらあれこれ吸収しているようだ。
議会には王宮の政官の枠があって、そこに誰を推すのかについて、この一週間繰り返し議論を重ねてきた。それには経験や実績が関係しているわけだけだけど、やはり人と人との付き合いが大切なだけに、選挙で選ばれた議員との相性のことも考える。
そしてそれは組閣に関してもそう。基本的にはどの役職に政官または一般議員のどちらが就くのかは決まっていない。よって当選者とのバランスを考えた人事を、しかも短時間でやってのけなければならないのだから、準備が大切だ。
それをうまくやり遂げる秘訣はただ一つ、人をよく見極めること。
これはただ教わるだけでは身につけることができない、つまり自分でそのセンスを磨くしかない。だから沢渡くんにも人と会う機会を多く作ってあげなければならない。ただ、沢渡くんは学業の都合で彼の存在自体を公表していないのだから、やりにくくて仕方がない。
結局結城ともよく話し合ったことだけど、やはり彼をまだ役職に就けることは控えることにした。ただしその代わり、宮殿の中ではできるだけ仕事をしてもらうことにする。特に僕が外国に行っている間、我が国で行われる食事会などに出席してもらえると、とても助かる。それから、外国の王室の方々には積極的に紹介することにする。
時々チラッと沢渡くんのほうに目をやると、物怖じすることなく熱心に辺りの様子を見ていることが分かる。頼もしい。
しかしそんな僕にも休憩は必要で、一息ついている間に私用の携帯電話を見てみた。・・・メールが5件、そのうちの一つは舞からだった。
“件名:お疲れさま
これからしばらくお仕事は大変そうだね。でも月末はどうかな?
ほら、貴くんは私の学校の先生方に会いたがっていたじゃない?
もし今もそう思っているなら、
私や転勤される先生方のために開かれる、お別れ会に来てみてはどうかしら?
もちろん都合が合えば、だけどね。
一応お知らせしておきます。
3月26日19時から…にて”
なるほどね~。その日なら何とかなりそうかな?というか何とかしたいね。そういえばもうすぐ卒業式と、終業式があるって言っていたし・・・お祝いは用意してあげないと。・・・考え始めたら、気分が盛り上がってきた。
よし、それまで僕ももう少し頑張ろう。