3/15 (火) 17:30 作戦会議

我が家は当選したというのにまだバタバタしている・・・が、そんなことは俺の知ったことではない。

新入生歓迎会では、俺と沢渡が兄弟役を務める作品を上演する。これなら部内も揉めないし、女の子集めにもいい材料になるだろう。・・・普段なら女の子集めには困らないのに、こうして真剣に考えている俺たちの姿はかなり笑える。

仕方がないので、実際に女の子の意見を求めることにする。しかもここは、いつも客観的な立場にいる村野さんを加えることにして。

「それで、俺たちの舞台には魅力があるんだかないんだか、どっちなんだろう?」

「もちろん魅力的ですよ。特にこの作品は、兼古先輩と沢渡くんが兄弟という設定自体ポイントが高いですし、更に沢渡くんが苦悩の表情を浮かべるところがたまりませんね」

・・・普通の女の子は、俺にここまではっきり言えないぞ。

「でも、観るのとやってみるのとでは違うんじゃないかと思います。素人目にも演技力の高さは分かるじゃないですか。下手に部に入って兼古先輩から睨まれるよりは、観ているだけのほうが楽しいと思うのが普通かもしれません」

「俺みたいに優しい男はなかなかいないと思うけど?」

「もちろん、それは分かっていますよ。でもやっぱり兼古先輩は一目置かれる存在ですから、なかなかお近づきにはなりにくいんです、下級生にとっては」

「それじゃ、部員が集まらないじゃないか。でも逆に、興味本位で来られるのも困るな」

「そうです。だから技術的なことはともかく、演劇の面白さが伝わるように心がけるべきだと思います。私も演じてみたい、と思わせるように。そう考えると今回の作品はウチの学生を引き込むには打ってつけでしょう。後は未経験者でもきちんと指導はするということを、アピールしたほうがいいんじゃないですか?その点に関しては、兼古先輩も沢渡くんも高校に入ってから演劇を始めたわけですから、体験談を話してくれればいいと思いますけどね」

相変わらず村野さんはしっかりしている。美智がかわいがっているのももっともなことだ。

「ただ・・・、女の子には致し方ない問題がありまして・・・」

「何?」

「その・・・、やっぱり二人はカッコよすぎるんですよ。私は沢渡くんを見ていても別にどうも思わないのですが、先輩と向き合うと未だに緊張してしまって・・・、部長慣れるものですか?」

何の話だ、一体。

「私は逆に、沢渡くんに見惚れてしまうわ。綺麗な顔立ちだし・・・」

勝手に二人で盛り上がるな。つまり、オーディションの時にときめいている子はダメだってことだろ。

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