俺の将来ねぇ~。
「沢渡は将来何になるんだ?」
うっ、と、沢渡が急に言葉を詰まらせたから、逆にこっちのほうが驚いた。そんなに変なこと聞いたか?
「とりあえずは進学すると思いますけど、どの学部に行くかはまだ決めていません。そしてその後は・・・、政治家ですかね」
政治家!・・・まあ、沢渡は成績が超優秀だから、進路も選り取りみどりだと思うけど、
「政治家なら、法学部とか経済学部に行くんじゃないのか?」
「そう考えるのが普通だと思うんですけど、折角なので学生生活でしかできないこともやってみたいなと」
「え?例えば?」
「・・・建築とか」
・・・それは政治とは関係なさそうだな。それで政治家になれるのか?
「先輩は?」
・・・さては沢渡、あまり聞かれたくなかったと見える。
「俺もな~、まだ分からないよ。ただ一つだけ言えることは、親父みたいにはなりたくないということ」
「先輩なら人望が厚いのに」
「それ以前に、政治に興味がないのだからしょうがない。だいたいどうしたら政治家になりたいなんて思えるんだ?」
「・・・そうですね、いつからか自然になりたいと思っていました。最初は嫌だと思ったこともあったんですけど、クリウスの先輩でもある殿下はやっぱり素敵ですから、憧れます」
「だったら入宮するという手もあるんじゃないか?」
「・・・それも考えていますけど、まだ僕は1年生ですし、3年の夏くらいに最終決定すればいいことですよね?」
・・・沢渡はな。その成績ならどこにだって行ける。
「先輩は演劇を続けないんですか?先輩の演技をもっと見たいと思っているんですけど」
「でも、それで生活をするのは難しいだろう。何より、そんなことを親父が許すはずがない」
「でも落選のリスクを考えると、政治家だって似たようなものでしょう。部長は大学で脚本家になるための勉強をするんですよね?」
「そうみたいだな。俺だって演劇は好きだけど、そこまでは思い切れないかな?」
「じゃあ、力試しにオーディションを受けてみるとか」
オーディションか・・・。それくらいなら今でも出来るな。