3/17 (木) 17:00 将来

俺の将来ねぇ~。

「沢渡は将来何になるんだ?」

うっ、と、沢渡が急に言葉を詰まらせたから、逆にこっちのほうが驚いた。そんなに変なこと聞いたか?

「とりあえずは進学すると思いますけど、どの学部に行くかはまだ決めていません。そしてその後は・・・、政治家ですかね」

政治家!・・・まあ、沢渡は成績が超優秀だから、進路も選り取りみどりだと思うけど、

「政治家なら、法学部とか経済学部に行くんじゃないのか?」

「そう考えるのが普通だと思うんですけど、折角なので学生生活でしかできないこともやってみたいなと」

「え?例えば?」

「・・・建築とか」

・・・それは政治とは関係なさそうだな。それで政治家になれるのか?

「先輩は?」

・・・さては沢渡、あまり聞かれたくなかったと見える。

「俺もな~、まだ分からないよ。ただ一つだけ言えることは、親父みたいにはなりたくないということ」

「先輩なら人望が厚いのに」

「それ以前に、政治に興味がないのだからしょうがない。だいたいどうしたら政治家になりたいなんて思えるんだ?」

「・・・そうですね、いつからか自然になりたいと思っていました。最初は嫌だと思ったこともあったんですけど、クリウスの先輩でもある殿下はやっぱり素敵ですから、憧れます」

「だったら入宮するという手もあるんじゃないか?」

「・・・それも考えていますけど、まだ僕は1年生ですし、3年の夏くらいに最終決定すればいいことですよね?」

・・・沢渡はな。その成績ならどこにだって行ける。

「先輩は演劇を続けないんですか?先輩の演技をもっと見たいと思っているんですけど」

「でも、それで生活をするのは難しいだろう。何より、そんなことを親父が許すはずがない」

「でも落選のリスクを考えると、政治家だって似たようなものでしょう。部長は大学で脚本家になるための勉強をするんですよね?」

「そうみたいだな。俺だって演劇は好きだけど、そこまでは思い切れないかな?」

「じゃあ、力試しにオーディションを受けてみるとか」

オーディションか・・・。それくらいなら今でも出来るな。

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