3/18 (金) 13:30 狙い

最近沢渡はつれない。部活こそきちんと参加しているが、夕食に誘っても「用事が・・・」と逃げられてしまうし、日に日に疲れた顔になっていくような気がする。これじゃあまるで、ウチの親父みたいだ。・・・なんて、いくら沢渡が政治家になりたいからって、日々議会の動向をチェックしているというわけではないと思うが・・・。

だからせめて、と、昼食に誘ってみることにした。・・・沢渡を誘うともれなく朝霧も、にはもう慣れたから、特に気にはしていない。

「今の感じで、女の子の希望者は増えるかな?もっと手を加えたほうがいいかな?」

「・・・って相談を男だけでしているのも、不思議な話ですけどね」

「男同士でしか話せないことだってあるじゃないか」

「考えてみたんですけど、女の子だけを募集してもしょうがないんじゃないですか?今は先輩がいるからいいですけど、今後のことを考えると男女ともにバランスよく育てていかないと」

・・・俺はそこまで先のことは考えていなかった。

「だから僕たちは特に、男の気も引かなきゃいけないんじゃないですか?やり過ぎない程度にですけど、兄弟愛をアピールするとか」

「・・・男の気を引くには、お前がいれば十分だよ。お前には色気があるし」

「何言ってるんですか。上級生のことを口説く下級生が、どこにいるんですか!」

・・・何だ、ちょっとは自覚があるんじゃないか。さては男からも告白されているとか?

「・・・そんな目で見ないでくださいよ」

「俺は沢渡のこと好きだもん」

「好きだもん、って先輩、もう。そういうことを公共の場で言うから、変な噂が立つんですよ」

「何だよ、二人きりのときに言われるほうがいいのか?」

「だから先輩、そういう意味じゃなくて・・・」

ふと朝霧を見ると、実に楽しそうに俺たちの様子を見ていた。・・・妙に慣れたように。朝霧はそういう偏見を持たないタイプなんだな。

「話を戻しましょうよ。新入生歓迎会の話でしたよね」

そうだった。

「僕たちの作品は都のコンクールでも評価されたわけですから、作戦を練るなら、体験入部のときの扱いとかの方がいいんじゃないですか?」

「なるほどな・・・」

「変に狙わないほうがいいですよ、きっと。僕たちは僕たちの作品作りに集中すればいいんじゃないですか?その雰囲気に合わない人がたくさん希望してきても、しょうがないですし」

そうかもしれない。俺たちは作品に自信を持っている。それを信じていればいいというわけか。

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