最近沢渡はつれない。部活こそきちんと参加しているが、夕食に誘っても「用事が・・・」と逃げられてしまうし、日に日に疲れた顔になっていくような気がする。これじゃあまるで、ウチの親父みたいだ。・・・なんて、いくら沢渡が政治家になりたいからって、日々議会の動向をチェックしているというわけではないと思うが・・・。
だからせめて、と、昼食に誘ってみることにした。・・・沢渡を誘うともれなく朝霧も、にはもう慣れたから、特に気にはしていない。
「今の感じで、女の子の希望者は増えるかな?もっと手を加えたほうがいいかな?」
「・・・って相談を男だけでしているのも、不思議な話ですけどね」
「男同士でしか話せないことだってあるじゃないか」
「考えてみたんですけど、女の子だけを募集してもしょうがないんじゃないですか?今は先輩がいるからいいですけど、今後のことを考えると男女ともにバランスよく育てていかないと」
・・・俺はそこまで先のことは考えていなかった。
「だから僕たちは特に、男の気も引かなきゃいけないんじゃないですか?やり過ぎない程度にですけど、兄弟愛をアピールするとか」
「・・・男の気を引くには、お前がいれば十分だよ。お前には色気があるし」
「何言ってるんですか。上級生のことを口説く下級生が、どこにいるんですか!」
・・・何だ、ちょっとは自覚があるんじゃないか。さては男からも告白されているとか?
「・・・そんな目で見ないでくださいよ」
「俺は沢渡のこと好きだもん」
「好きだもん、って先輩、もう。そういうことを公共の場で言うから、変な噂が立つんですよ」
「何だよ、二人きりのときに言われるほうがいいのか?」
「だから先輩、そういう意味じゃなくて・・・」
ふと朝霧を見ると、実に楽しそうに俺たちの様子を見ていた。・・・妙に慣れたように。朝霧はそういう偏見を持たないタイプなんだな。
「話を戻しましょうよ。新入生歓迎会の話でしたよね」
そうだった。
「僕たちの作品は都のコンクールでも評価されたわけですから、作戦を練るなら、体験入部のときの扱いとかの方がいいんじゃないですか?」
「なるほどな・・・」
「変に狙わないほうがいいですよ、きっと。僕たちは僕たちの作品作りに集中すればいいんじゃないですか?その雰囲気に合わない人がたくさん希望してきても、しょうがないですし」
そうかもしれない。俺たちは作品に自信を持っている。それを信じていればいいというわけか。