3/21 (月) 23:00 深読み

このところかなり疲れている。幸い、試験があったり、試験の後は大した授業がないから仕事に専念できるけれど、人に会うというのはそれだけでかなりのエネルギーを使うものだ。

もともと僕は王宮の秘蔵っ子として育てられてきたわけで・・・一時期かなり荒れたせいもあって、あまり人と接するのが得意ではない。でも殿下のお供をさせていただいていると、実にたくさんの方に会われているのが分かる。そしてまた、その人の評価をするのが大切だと教わっている。

先週組閣されて、僕も宮殿での顔合わせの際には、正式に次期皇太子であり予算案の作成にも携わったと紹介していただいた。今回の内閣は約半数の人が入れ替わった。そして兼古先輩のお父さまともお会いしたのだけど、お父さまは僕に対して取り立てて変わった反応は示されなかった。・・・それはつまり、息子の舞台をご覧になってはいらっしゃらないということだ。

「沢渡くんは、兼古大臣についてどんな印象を持った?」

殿下はほぼ毎日、その日に会った人の印象を僕にお尋ねになる。人を見る目を養うのが目的なのだという。

「仕事はできそうですが、頑固そうな印象を受けました。家族のことはあまり省みないタイプのようです」

「別に家族のことに関しては、今はいいんだよ。仕事面について言ってくれれば」

・・・そうですね、失礼しました。

「ですが、例えば家族思いの方であれば、国民のことを第一に考えて仕事をなさり、家族と過ごすことできちんと息抜きができて、その分仕事にも打ち込めるかもしれません」

「それはいい点をついているね」

打って変わって、今度は穏やかな表情で微笑まれた。

「プライベートが充実しているかどうかは、強みになることがあれば弱みになることもあると思うんだよね。それは君にも言えることだ。兼古大臣と付き合う際には、先輩のお父さまだから、なんて接し方をしてはいけない。これはあくまでもビジネスの話だし、大臣にしても、息子の後輩に頭を下げなければならないなんて面白くないだろうね・・・特に今はそう思われている。顔合わせの時の君を見る目は、完全に舐めてかかっていたよ。それには気づいたよね?」

舐めてかかっている、とまでは思いませんでしたけど、好意的でないのは分かりました。

「そして君は自分でも言っていたじゃないか、頑固だろうって」

そうですね。兼古大臣には気をつけろということですね。一緒に仕事をする機会はしばらくはないと思いますけど、しっかり覚えておきます。

「それにしても大臣のほうも、沢渡くんに気づいていないなんてまだまだだよね。息子の後輩だと最初に気づいていれば、後から困ることもないだろうに・・・」

それは今後、大臣がお困りになるということですか?・・・そうですよね。殿下の読みの深さは見習わせていただかないと。

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