3/23 (水) 21:30 帰り道

最近殿下とご一緒させていただく時間が長い。それはとても光栄なこと。この機会に少しでも殿下から学んでおきたいと思う。

と思ったら、今日は仕事の帰りに、一緒に息抜きをしようとのこと。

「今からは仕事の話はなしだからね。息抜きは大事だよ」

そして殿下は、歩いて帰るからいいよ、何ておっしゃって車を途中で降りられた。・・・まだ街のど真ん中なのに。

殿下は散歩がお好きで、宮殿内でもよく歩いていらっしゃる。でもやはり外の空気が吸いたくなるとのことで、街中もよく一人で散歩されているとのこと。

「例のお土産、もうすぐ届くからね」

「ああいうのは普通、お土産なんて言わないんですよ」

僕は来週引越しすることになっていて、その新しい部屋には、昨年殿下が約束してくださったグランドピアノが置かれる。結局部屋のコンセプトは、できるだけ生活感を出さないことで、インテリアコーディネーターともよく相談して、宮殿の一室を改装していただいた。

「引っ越したら早速演奏会を開いてね。・・・舞も誘っていいかな?」

「もちろんです。僕のつたない演奏でよければ、どうぞ」

舞さんは、間もなくお妃教育を受けられることになっているそう。

「でもね、議会がドタバタしたおかげで、まだご両親への挨拶が済んでいないんだ。それから、舞を少し休養させてあげたいんだけど・・・、来月に少し旅行に行ってきてもいいかな?」

「僕に協力できることがあれば、おっしゃってください。一応僕は殿下の代理を任されていますし」

「それは、場合によりけりだけどね」

・・・すみません、僕がまだ至らなくて。

「ううん、今のは冗談。沢渡くんは頼もしいから助かるよ。それに比べて僕は、この間劇場で兼古くんと清水さんを見かけたとき、思わず声をかけようとしてしまったくらいだからね」

「先輩方は、殿下と目が合ったと言っていましたよ」

「僕にも沢渡くんの気持ちが分かったよ。身近な人に隠し事をしなければならないなんて辛いよね。できるだけ早く、沢渡くんに快適な生活をしてもらえるように検討するよ」

いいえ、僕のことはいいんですよ。殿下のほうこそ、もっと自分のために時間を使われてはいかがですか?

「殿下、僕とより舞さんと一緒のほうがいいのではありませんか?」

「大丈夫、それは沢渡くんが心配する問題ではないよ。・・・そうだ、足湯につかりに行こうか。気持ちいいんだよ」

・・・足湯?殿下の見聞の広さには脱帽です、はい。

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