「この間は随分飲んでいたみたいだね」
“ゴメンね。何か変なことしなかった?”
「大したことはなかったけど、“本当は杉浦先生ってこうだったんだ~”って他の先生方はおっしゃっていたよ」
“ウソ~。その印象がついちゃったらどうしよう?”
大丈夫、冗談だから。
ということで、今日は今週の予定について話しておこうと思って電話をかけている。やっぱりけじめとして、年度が変わる前に挨拶をしておくのがいいと思って、スケジュールを立てておいた。
「まずは明日、僕の家族に会ってほしい。そして明後日は舞の家族と食事、そして土曜日には宮殿で両陛下と食事、ということでいいかな?」
“陛下と・・・、それに立て続けね、大丈夫かしら?”
「緊張するのは僕だけで十分だよ。舞のお父さんに何か言われたらどうしよう?」
“それは大丈夫。それよりも私でしょ、貴くんのお父さまにお会いしたことないし、ましてや陛下になど・・・”
「そっちのほうは大丈夫。僕がめいっぱいフォローするから。・・・じゃあ、お互い様だね。二人でこの苦境を乗り切ろう!」
“もう、苦境とか言わないでよ。・・・それもだけど、どんな服装で行ったらいいの?”
「僕の家族に会うのに、別におしゃれをする必要はないよ。夜ちょっと話をするだけだから、僕は普通に仕事帰りのスーツ姿だね。陛下にお会いするためには・・・、金曜日に二人で洋服を買いに行こうか」
“だったら安心だけど・・・、貴くんはそんなに毎日大丈夫なの?”
「仕事は昼間にしっかりしておくから平気だよ。それから、好きな服を買っていいよ。僕からの退職祝いとしてね」
“いいよ~、学校にお花を届けてくれただけでも嬉しかったのに”
「結婚前に、僕が甲斐性のある男かどうか確かめておいたほうがいいよ。結婚したら実は借金があって貧乏暮らしを強いられたなんて事になったら、舞も困るだろう」
“もう、皇太子殿下相手に誰もそんな心配しないわよ。それよりも心配なのは、貴くんの健康。私のために忙しくしてくれなくてもいいからね。睡眠はきちんと取れているの?”
「最近は調子がいいよ。結婚が近くなったら、元気が出てきたみたい。そうそう、土曜日には、宮殿に来たついでに改めてお妃教育についての詳しい説明をさせてもらうけど、一応今後の予定としては、4月の中頃からお妃教育を始めて、おそらく6月頃には婚約を公表することになると思う。そして結婚は秋だね。新婚旅行は年末年始辺りかな?」
“そんなに先のことまで”
「で、婚前旅行は来週」
“え?”
「仕事で疲れただろう?それに僕もしばらく一緒にいてあげられなかったし、今後お妃教育を頑張って受けてもらうためにも、英気を養ってもらいたいと思って」
・・・スケジュールは完璧、と。