春休みだけど、新入生歓迎会が近づいているということで午前中は部活がある。休んだほうがいいかと思ったのだけど、
「行って来い。別に響だっていつも宮殿にいるわけじゃないだろ?」
とあっさり結城に言われ・・・というか、殿下の場合は宮殿にいらっしゃらないことが多いのだけど、それはもちろん仕事をなさっているからで・・・、でも部活も、僕が行かないと部長や兼古先輩が困ってしまうからね。
一応、月が替わったので2年生ということになるのだけど、まだ実感が湧かない。ドキドキしながら入学式に出席してから1年、いろいろなことがあった。それは長いようで短いようで・・・、思い出したくないこともいくつかある。
「年度始めなので一応また話しておきますが、当面の目標は有能な人材を発掘することです。おそらくオーディションにはたくさんの人が参加してくれると思いますが、邪な人たちばかりでは何の意味もありません。演劇経験者を入部させることはもちろん大切ですが、才能を秘めた未経験者を参加する気にさせることが大切です。そのために・・・」
部長はチラッと僕のほうを見た。
「みんな、アットホームな雰囲気を作ってね。入りやすそうな、入るといいことがあると思わせるような雰囲気にしてね。演劇部が楽しいのはみんながよく知っていると思うけど、私たちのことをよく知らない人にもそれが伝わるようにしてね」
そんな雰囲気を持ち合わせていない人の筆頭が僕?
「みなさんも、意見とか要望とか相談事があったら、気軽に私たちのところまで来てください。部員全員の力でこの部をもっとよくして、全国大会で優勝しましょう。今年度もよろしくお願いします」
ちょっと耳の痛い話だけど、確かに全国大会で優勝するためには、部内で揉め事を起こしている場合ではない。少なくとも、今までのやり方ではよくないということだ・・・。
「なあ、沢渡」
部活が終わると、兼古先輩が嬉しそうにやって来た。
「これから空いてる?買い物に付き合ってほしいんだけど・・・」
あ・・・、さすがにこれ以上は厳しい。部活が終わったらすぐ帰ると、結城にも伝えてあるし・・・。
「新年度早々フルか?普通」
「すみません・・・」
「まあいいよ、急に言った俺が悪かった。でも本番までには付き合ってくれ。衣装のことでちょっと打ち合わせをしたいから」
はい・・・。先輩に本当のことを話せるのはいつなのかな?