今日は宮殿で、新政府の方々を集めた夕食会が行われる。
「いいか、酒は飲むなよ。お前の場合、何をやらかすか分からないから」
いきなり結城から釘を刺されてしまった。・・・年齢のことを別に隠したりはしていないが、紹介もされなかった。一応成人に見えなくもないので・・・というか、大体年よりは上に見られることが多いので平気だとは思うのだけど、それよりも僕がお酒に弱いことを心配しているらしい。
「失礼だね、大丈夫だよ。こんなに緊張していたら酔っていられる余裕はないって」
「だからこそ飲む、とか言うなよ。響の代わりをしっかり務めることだけを考えてろ」
そしてハグ・・・。仕官がいる前でそれはやめてよ、お願いだから。
夕食会では、近くの席になった大臣の方々との話に参加させていただいた。
「失礼ですが、沢渡さんはおいくつでいらっしゃるのですか?」
「16歳です」
あっ・・・と、周囲の視線が一斉に僕に集まってきた。・・・意図的なのだろうけど、兼古先輩のお父さまとは違うテーブルだ。
「このことは他言無用でお願いします」
「高校生でいらっしゃるのですか?」
「はい、そうです」
・・・これも結城から言われたこと。僕の素性に関しては、質問自体には答えても、質問以上のことは答えないこと。そして、さっさと話を替えさせていただく。
僕の今年度の課題は、人脈を増やすこと。それでなくても他の政治家のみなさんとは世代が違うので、話が合いにくい。でもこの仕事をするには人と人とのつながりが重要であることは、殿下のお供をさせていただくたびに思い知らされることでもある。・・・皮肉なものだよね、学校では敢えて距離を置こうとしているというのに。
でも政治という共通の話題がある分、大人との付き合いのほうがうまくいくかもしれない。小さい頃から僕は大人の間で育ってきたわけだし・・・でもね、お酒の付き合いが出来るようになったほうが、いいような気がするのだけど。
時間が経つにつれて、僕を見る目が変わってきたように思う。最初は明らかに値踏みするような視線だったのに、それぞれの目に危機感が宿り始めた。
でも兼古先輩のお父さまは、挨拶をさせていただいても無反応だった。・・・それってどうなのだろう?