一旦リラックスしたら身体も疲れることを思い出したのか、今日は部屋に帰ってくるなりソファーに横になってしまった。
「沢渡さん、お風呂が沸いておりますが・・・」
「う~ん、あと」
とりあえず眠くて眠くて仕方がない。これは、先ほど殿下が帰っていらしたという、精神的なゆとりからも生まれているのだと思う。今は少し眠りたい・・・。
しかし、目が覚めると、そこにいたのは加藤だった。
「別に待っててくれなくてもよかったのに」
すると加藤は目をぱちくりさせて言う。
「あの、まだ15分しか経っておりませんので、待つも何も・・・。片付けをしていただけです」
あれ?そうなの?・・・でも僕は今の睡眠でかなりすっきりした。
「あの・・・、一つ申し上げたいことがあるのですが」
・・・何?
「沢渡さんが精力的に仕事をこなされるのを拝見して大いに感銘を受けたのですが、肝心の私の立場をまだつかみきれておりませんで、・・・何処まで手を差し伸べてよいものか、考えあぐんでしまいました。そしてその結果沢渡さんにご迷惑をおかけする事態になってしまったことを、お詫び申し上げます」
それは、昨日結城から注意を受けたってことだよね。
「僕は迷惑だなんて思ってない。自分のことはできるだけ自分で面倒を見るのは当然だし、自分のことは自分が一番分かっているつもりだよ。その僕が別に平気だったんだから、加藤の落ち度でもないわけ」
「ですが、通常とは違う緊張感の中にいると、痛くても痛くは感じないものです。ですから、私が客観的に判断しなければなりませんでしたのに・・・、申し訳ありませんでした」
「そんなに一方的に謝らないでよ。僕は出来るだけ勉強したかったわけだし、それを邪魔されなかったという意味では、僕のほうが感謝しなきゃいけないくらいだし」
「沢渡さん!昨夜みたいに薬を盛られても平気なのですか?私はできれば強硬手段には出たくありません」
・・・でも昨夜は気持ちよくぐっすり眠れたから、それもありかな、と思う。
「僕は加藤のことを信用しているから、任せるよ。本当にしなきゃいけないことがあって寝たくないときにはそう言うから、僕の調子がおかしいときにはさりげなく手を施して。・・・できれば、僕にバレないように」
よろしいのですか?と加藤は心配そうに僕の顔を見てくる。・・・どうやら僕は、自分のことがよく分かっていないらしい。誰かが止めてくれないと、僕は何処までも突っ走ってしまうみたいだ。
「でも出来るだけ僕も、体調とかを伝えるようにするよ。・・・今日はもう大丈夫だから、ありがとう」
「そうですか。では失礼いたします。おやすみなさい」
・・・もうすぐ有紗さんがいらっしゃる。