これからの高校生活には不安だらけ。親の希望でクリウスに入ってしまったら、案の定友達にはなれそうにない人たちばかり。それは入学式のときですら感じた。どの人もお高くとまっていて、派手なメイク、アクセサリー、そしてむせ返るような香水の香りがする。こんな自己主張が強い人たちの間でやっていけるのか、とても心配・・・。
挨拶をした生徒会長は、まるで芸能人のようにカッコよかった・・・でもそんな人と、お近づきになれるはずがない。
今日は始業式。2、3年の人たちとも会う。クリウスは学年ごとに校舎が違うから、普段他の学年の人たちと会うことは、ほとんどないみたい。それゆえに、集会などがあるときには失礼がないようにしないといけない、と誰かが言っていた。・・・でも、パッと見ただけでは学年が分からない。どうしたらいいのよ。
予想通り、講堂に出てはみたけど、何処に行けばいいのか全然分からない。誰かに聞かないと・・・でも、もし上級生だったらどうしよう。
「あの・・・、もしかして同じクラス?」
え?急に尋ねられて振り返ると、綺麗というよりはかわいい女の子が立っていた。
「ああ、よかった。私も迷子になってたの。先生に聞いてみようよ」
彼女は私の腕をつかむと、そのまま近くにいた先生のところまで引っ張っていき、何処に並べばいいのか聞いてくれた。・・・助かった。彼女に出逢わなければ、ずっとオロオロしているだけだっただろう。
式が終わって教室に帰るとき、私は彼女にお礼を言った。
「いいのよ。私も、一人だったら聞きに行く勇気が出なかったと思うし。・・・あ、私は後藤若菜」
「私は川端深雪。よろしく」
後藤さんは、周りの人と比べるとまだ付き合いやすい感じがする。彼女も、都内の私立中学からクリウスに進学することになったらしい。
実は同じ中学出身の人もいないわけではない。でも私は内気なほうだったから、友達はほとんどいなかった。しかも、クリウスに来た人はと言えば、目立つ、または派手な感じの人ばかり。だから私はクリウスには入りたくなかったのだけど、親がどうしてもと言うので、そうせざるを得なくなった。
でも後藤さんみたいな子もいると知って、ちょっと安心したかも。
「それにしても、生徒会長の兼古さんってカッコよくない?お父さんもこの間大臣になったばかりだし、いいことづくめだよね」
・・・やっぱり、みんな思うことは同じなのね。
「でもね、兼古先輩には長く付き合っている彼女がいるんだから、あなたたちなんか絶対敵わないわよ」
うわっ・・・。いきなり、近くにいたおそらく先輩であろう人から言われて、思わずビクッとしてしまった。