でも若菜のほうは、積極的に情報を集めて私のことを構ってくれる。・・・今日は昨日とは違う学食で、
「兼古先輩って演劇部なんだって。それで去年は全国大会で二位まで行ったっていうから、カッコイイだけじゃなくて、実力も相当なものみたい。ただね・・・その演劇部の部長っていうのが兼古先輩の彼女らしいの。・・・凄く大人っぽくて綺麗な人なんだって」
ふ~ん。ちなみに明日は新入生歓迎会があって、そこで演劇部が公演をするという話は昨日聞いていた。全国で二位というのなら、本格的ね。
「それでね、演劇部にはもう一人、2年の沢渡先輩っていうこれまたカッコイイ人がいるんだって。男の人なのに髪が腰まであって、凄くミステリアスな人らしいよ」
髪が腰まで・・・、それって似合ってるのかな?
「で、演劇部は毎年凄い人気で、今年もオーディションがあるんだって。それに受からないと入部できないみたい」
ふ~ん、でもそんな話をされても私には関係ない。華やかなところは苦手なんだって。確かに兼古先輩はカッコいいけど、縁のない人だから。
「それで、若菜はオーディション受けるの?」
「受けたいよ。ダメでもともと。近くで見れるだけでもいいし」
「演劇の経験は?」
「まるっきりない」
・・・そういうの、迷惑扱いされておしまいなんじゃないの?でもそっか、明日の新入生歓迎会は、楽しみにしていていいということなのね。
折角なので、放課後は若菜に付き合ってあちこちの部活を見学しに行ってみた。・・・けど、若菜は活動内容がどうこうよりも、カッコイイ人を見つけたいだけみたい。
「マネージャーになるっていう手もあるよね。テニス部の人、結構カッコイイよ」
「ねえ、それで仕事が務まるの?」
「まあ、そう言わず。カッコイイ人が一人でもいれば、どんなことにだって耐えられるよ」
「今までに彼氏いた?」
う~ん、と数え始める彼女。
「ちゃんと付き合ったのは、まだ三人かな?深雪は?」
うわっ・・・聞かないで。墓穴を掘ってしまったみたい。もちろん、彼氏なんていたことない。