4/14 (木) 17:00 新入生歓迎会

大企業の社長の二人息子はお互い仲が良く、将来は会社を継ぐために勉強を続けていた。しかし弟は、法学部に進学し家を出たいと言い出した。実は二人が腹違いの兄弟であることを弟は知っていたが、兄は知らなかった。

「でもだからと言って、家を出なくてもいいんじゃないか?」

「・・・この家で生活することには、もう耐えられません。僕は、あなたのお母さんには歓迎されていないのですから」

兄が母を厳しく咎めると、母は家を出た。「自分の子どもでもない子を引き取らなければならなかった私の気持ちが分かる?」と言われて、何も言えなくなってしまった兄。弟は、自分が出て行く代わりに母を迎えに行くようにと兄に言う。もう自分は一人でも暮らしていける年だから、と。

父が学費を援助することになったものの、家を出て一人暮らしを始めた弟。兄はやはり弟のことが気にかかるし、母も彼がいなくなって初めて、彼が占めていた家族としての位置に気づかされた。

「私がこれまでにした仕打ちのことは謝ります。やっぱり我が家に帰ってきてくれないかしら?」

彼のバイト先を訪れ、謝罪する母。彼は、もう大人だから、と帰ることは拒んだが、大学を卒業したら兄と一緒に父の会社を手伝いたいと言い、それは受け入れられた。

---

噂に聞いていた沢渡先輩。あの人は何て切ない目をするのだろう。確かにとてつもなくカッコイイ人だけど、印象に残ったのはその瞳だった。

「私、絶対演劇部に入りたい!」

いきなり若菜が言い出した。

「兼古先輩に沢渡先輩までいるなんて、毎日幸せ。ね、沢渡先輩もカッコよかったね」

「うん・・・だけど、レベルも凄く高かったよ。この様子で行くと、オーディションにもたくさん人が集まりそうだし・・・」

「落ちてもいいから、受けるだけ受けてみようよ。お近づきになれるチャンスを逃す手はないっ!」

すぐさま若菜は、廊下に貼ってあったオーディションのチラシの元へと私を連れて行く。

「明日の放課後だよ。深雪も行かない?」

「行く」

不思議と私は即答していた。今までは何に対してもやる気が起きなかったのに、何故か今回は行かなければならないという気がしていた。演劇というもの自体、私は見たことがなかったけれど、その舞台の上には日常空間とは違う世界が広がっていた。あんなふうに・・・自由に振る舞えたらいいな・・・。舞台の上だったら何をしても許されるのかな・・・。

とりあえず部活見学に行ってみた。案の定凄い人だかりができていたけど、オーディションの内容は聞き取ることができた。・・・別れのシーン。付き合ったことのない私が別れのシーンなんて演じられる?ああ、どうしよう。でも、絶対に受けに行く、その決心だけは固まった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です