今日の部活の時間は、必要以外ずっと目隠しをして過ごした。おそらくみんなは戸惑っていたのだろうけど、僕にはそれを肌に感じるだけの鋭い感覚はまだないようだ。とりあえず練習をこなすことはできたのだけど、出番以外で孤独を感じたことのほうが印象的だった。朝霧が側にいないときには、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。…隣に誰かが座ってもまずそれが誰なのか分からないし、ましてや自分から話しかけようという気などさらさら起きなかった。慣れていかなければならないとは分かっていても、今日はとても疲れてしまった。
「希。こんなところで寝ていると、余計に疲れるわよ」
…いつの間にか机に伏したまま眠ってしまっていたらしく、有紗さんの声に身体を起こす。
「お風呂に入ってリフレッシュしてきたらどう?」
はい、そうさせていただきますが… 何故か今日の有紗さんは優しい感じがする。そこに裏があるのではないかとふと思ってしまい、発想の物騒さに驚いてしまう。
このところ毎週会っているが、有紗さんとの時間はあまり楽しいものではなくなってしまっている。僕がいけないのか?…いや、僕だけが原因ではないと思う。結局有紗さんは、僕のことを認めてくれていないのだと思う。…僕のほうが年下だから、自分が手なずけている気になったままなのだ。…僕のものにはなってくれない。
「有紗さん」
僕は彼女を抱きとめて、キスをした。
「嫌だ、どうしたのよ。お風呂に入ってきて」
「僕は有紗さんと一緒にいろんなものを見たり感じたりしたいんですよ。なのに有紗さんは、いつも僕との間に一線を引いている。…大人の付き合いだとか何とかで、誤魔化していませんか?」
「そんなことないわよ。私はあなたのことが好き。…陛下も応援してくださっているのよ」
…何故に陛下を引き合いに出すんですか。話してくださったのは嬉しいですけど、今は僕たちの間に解決しなければならないことがあるんですよ。…そうやって変に僕のことを縛るのはやめてくれませんか?そのくせ、公にすることは躊躇うんでしょう?
「僕には有紗さんのことがよく分かりません。…何故僕たちが付き合っているのかさえも」
「希… どうしてよ。私の方だって希のことがよく分からないわ。どうしてそんなに気まぐれなの?」
気まぐれ?…有紗さんにだけは言われたくないですよ。