5/10 (火) 17:00 相乗効果

水曜日には部活が休みに入ってしまうので、今日は頑張らなければ・・・美智も殺気立っている。テストで休みになってしまうのがもったいないくらい、今回の脚本はよくできていると思う。加えて、沢渡がすでに気合い十分で体当たり演技をしてくれているから、俺としてもそれを受け止めるような演技を心がけるようにしている。これは充実した時間だ。

だけど、それよりも気になるのは沢渡と深雪ちゃんの関係。沢渡ははっきりと彼女がいると言っていたが、深雪ちゃんとの息がピッタリ合っていることは注目に値する。いつもはおとなしい彼女が演技をするとなると・・・特に沢渡と同じシーンでは生き生きして、沢渡のほうもまた、これまでの部内のトラブルが嘘のように演技に集中できているみたいだ。

「見違えるほどよくなって、怖いくらいよね~」

なんて美智も言っている。沢渡の熱意がみんなにも伝わっているようで、部室内には常にいい緊張感が生まれている。でもその原因はどうも目隠しにあるのではないかと思う。この間、部活の後にピアノ曲を決めていたときの・・・、深雪ちゃんが入ってきたときの沢渡の動揺ぶりは忘れられない。ただ彼女が入ってきただけなのに、次期皇太子であることをひたすら隠していたクールさからは想像できないような動揺ぶりだった。その沢渡が、二度と動揺しないように、と覚悟を決めて目隠しをしているように見えなくもない。

「多分、沢渡くんの彼女は年上なんでしょうね。それも王宮と大いに関係がありそうな人」

「どこぞの国の王女とか?・・・ならばますます納得だ。そういう人と付き合っているから、沢渡にとって普通なこともクリウスではやり過ぎってことになるんだよな」

「そうよ。高貴な方と付き合っていたら、両手にバラを抱えて待っているなんてことは普通のことなんでしょうね」

・・・おいおい、それは去年の誕生日のこと。あ、それで思い出したけれど、もうすぐまた俺の誕生日がやってくる。一応美智と過ごすことになっているが、試験前だとか何とかでうるさそうだ。

「沢渡くんがどう出るか、これから楽しみね」

「やっぱりあれは、好きってことだろうな」

「もちろんそうでしょ、私たちの目には明らかだわ。本人は一生懸命その気持ちを押し殺そうとしているみたいだけどね」

でも深雪ちゃんのほうは・・・、役に入ることで一生懸命で、沢渡との恋愛にまで気を回す余裕がなさそうだ。それに沢渡は自分の彼女をどうするのか。高貴な人との付き合いを選ぶのか、それとも・・・。

だけど何よりも大事なのは、全国大会で優勝を収めることだ。いい感じになってきているのだから、水を注したりしないようにしなければ・・・。

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