朝。出がけに、机の上に置いておいたはずのコミックがなくなっていることに気がついた。
「舞、ここにあった本知らない?」
「いえ、知らないわ」
じゃあ竹内かな?すると、
「昨夜私が退がらせていただきました時には、置いてありましたよ」
と言う。だったらやっぱり舞なのではないか?今日の移動時間に読もうと楽しみにしていたのに。
「私じゃないわよ。この部屋は物が多すぎるからもっと片付けたらいいのに、とは思っているけど、貴くんの物には触らないわ」
「でも昨夜はあったって言うし、僕は触っていない、となると他に誰がいる?」
「嘘、まだ私のことを疑っているの?本当に知らないから」
あまりにも彼女が言うので仕方なく引き下がったが、納得いかない。楽しみにしていただけに余計ショックだ。他には誰も部屋に入ってきていないのに、部屋のものが紛失するなんて・・・しかも、皇太子の部屋でだよ?どういうこと?
仕方ないので、途中で仕官に買ってきてもらって無事に読むことは出来たのだけど、後味が悪い。しかも今夜は宮殿に帰れない。・・・とりあえず電話することにする。
“ねえ、貴くんが探していた本って何ていうタイトル?”
「……だけど」
“それなら、ベッドルームに置いてあったわよ”
え?
“よく分からないけど、ベッドサイドの引き出しを開けたら入っていたの。貴くん、本当に心当たりがないの?私は全然ないわよ”
そう言われても・・・。僕にだって心当たりはない。
“昨夜はどうか分からないけど、貴くんはたまに夜中に起き出すことがあるでしょ?そのときに持ってきたのかもしれないわよ”
「それって夢遊病ってこと?」
反射的に竹内を見ると、彼にも心当たりがあるのか苦笑していた。そんな話は聞いていない。
「・・・疑ったりして悪かった。ごめん」
うわ~、ショックで立ち直れないかも。