5/12 (木) 15:30 校内の片隅で

今や、クリウスにおける話題の中心は沢渡になっている。学校生活では唯一3学年の生徒が入り乱れることになるランチタイムでの女の子たちの勢力争いの凄さは、目に余るものがあるらしい。・・・らしい、というのは、俺が行く学食では、やはり生徒会長である俺のことを気にするらしくおとなしいため、俺が実際に目にすることはないからだ。だから沢渡には、同じ学食に来るようにと言うのだけど、「これは僕の問題ですから」とか何とか言って、やって来ない。

幸い、今は目隠しをして部活に臨んでいるということに注目が集まっているみたいだからいい。その矛先が深雪ちゃんに向けられるようになったら危険だ。そこだけは早めに言っておいたほうがいいだろう。

放課後、生徒会長の仕事で校内を行き来していたら、沢渡の影を見かけた。・・・思わず柱の陰に隠れたのは、2年で一番美人だと有名な林田さんと一緒にいたからだった。

「どうしても、私の想いは伝わらないの?」

「いや、想いは伝わっているよ。でも、それには応えられない」

「どうしてよ。沢渡くんの彼女って本当に実在するの?誰も見たことがないのに・・・」

「君には関係ない」

「またそうやって誤魔化して・・・、ひどすぎるわ・・・」

ヤバイ・・・。このままでは鉢合わせてしまう。出来るだけ柱と同化しようとしていると、彼女が泣きながら駆けて行った。よかった・・・けど、次から来た足音は、しっかり柱の反対側で止まってくれた。

「何やってるんですか、先輩」

「・・・別に俺だって、聞きたくて聞いていたわけじゃないぞ。すぐそこに用があるんだ」

そうですか、じゃあ今のは忘れてください、と言い残して去っていこうとする沢渡。でも、

「ちょっと待てよ。あの断り方はよくないんじゃないか。誠意が感じられない」

と言わずにはいられなかった。沢渡でもあんな高慢な態度をとることがあるんだ、と思ってしまうくらい、感じが悪かった。

「・・・すみません。最近僕おかしいんですよ。彼女とうまくいっていなくて、いつもイライラしているんです」

そうなのか?それはどうして?

「それがよく分からないから困っているんですよ。修復したいのか、別れたいのかすらも・・・」

すると突然、あ、と、沢渡が呟いた。

「いい案を思いついたので試してみます。では今日はこれで・・・」

あ、ああ。・・・何だよ、一人で納得して。気になるじゃないか。

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