18歳になると車の免許が取れ、飲酒と喫煙が可能で、選挙権が与えられる。これで大人の仲間入りだ。特に俺は車が好きなので、夏休みには免許をとりに行きたいと思っているのだけど・・・。
「何言ってるのよ、受験勉強は大丈夫なわけ?」
あ、それは・・・。まだ決めかねている。何処の大学にするのか、いやそれ以前に大学に進むのかどうか。俺ははっきり言って勉強が得意ではないし、これ以上勉強したくない。しかしそんなことは親父が許さない。
実は、このところ街を歩いていると、よく芸能プロダクションからスカウトされる。しかも、俺のことを知っていてスカウトしてくる場合もある。芸能界には何となく憧れがあるし演じることも好きだから、やってみたい気持ちもある。ただ生活が不安定だからなかなか踏み切ることが出来ないし、美智にもまだ言っていない。
「なあ美智、俺に才能があると思うか?」
「え?どんな?」
「沢渡には政治家の、そして美智には脚本家としての才能があるわけだろ?俺にも何かしらの才能があるのかな?」
彼女は、まだ私に才能があると分かったわけじゃないわ、と言い置いてから、俺のことをくまなく眺めた。
「どうかな~、残念ながら政治家って気はしないのよね。確かにリーダーシップをとるのに長けているし、カリスマ性もあると思うんだけど、肝心の政治には疎い感じじゃない?」
そうだよ、悪かったな。
「でもいずれにしても、人前に出る仕事が向いているんじゃないかと思うの。見た目もいいしね。ただ、下手に芸能人なんかになっちゃうと、親の七光りだとか何とか言われて終わっちゃいそうだから、やめておいたほうがいいと思うわよ」
いきなりそう来たか。・・・どこにいても、親の存在が関わってくるわけか。沢渡みたいに自力で人生を切り開いていけたらいいのに。
「でも祐輔って、少しずつお父さんに似てきた気がする。その外見もご両親のおかげなんだから、今日はきちんと御礼をしなさいよ」
Red Ribbon Dayか。両親に日頃の感謝を込めて贈り物をする日。あんな親でも親は親。特に、両親が離婚したおかげで母親一人に育てられている美智からそれを言われると、痛い。