僕なりに考えたことがある。
村野さんは大事な友達だ。だから、僕の素性を明かしておきたいと思ったのだ。
「そういうことだったのね」
今日はさすがに他人には聞かれたくなかったので、朝霧と三人、部室で昼食をとることにした。…やっぱり、彼女もそうだった。話すと妙に納得する人が多い。
「うん、だから、同世代の人たちといるとどうも足並みを乱してしまうみたいで、村野さんにも迷惑をかけてしまっている。本当に申し訳ない」
「ううん、次期皇太子殿下と同級生だなんて光栄だわ。…大丈夫よ、高校のときは苦労していました、なんて言わないから」
ちょっと…、笑えないよ、それ。
「それよりも、響殿下とも親しいの?お目にかかりたいわ」
…村野さんまでそんなことを言うなんて。やっぱり殿下は人気があるんだよね、はさておき、
「僕は村野さんのことを大切な友人だと思っているし、部活のことに関しては頼りにしている。でもそれは僕の事情に過ぎないわけだし、村野さんの身にこれ以上何かあったら困るから、部活のとき以外はできるだけ話をしないようにしたほうがいいと思うんだ。もちろん、電話なんかは大歓迎だけど、わざわざ他人の気を逆撫でることはしないほうがいいよね」
村野さんは最初は平然と聞いていたが、徐々にその表情に陰りが見えてきた。…僕は村野さんのことを守るつもりで言ったのに、傷つけることになってしまったのではないだろうか。
「私は全然気にしないよ。何があっても大丈夫だから心配しないで。だってただの友達だよ?そこまで警戒することないんじゃないの?」
「でも…、取り返しのつかないことになったら困る。それに僕には他にも考えなきゃいけないことがたくさんあるから、回避できることはできるだけそうしないと、何もかも中途半端になって迷惑をかけてしまうことになる。これは僕としてのけじめだから、協力してほしい。その代わり、僕も今後は隠し事はしないようにするから」
「いやだ、沢渡くん、頭を上げて。…朝霧くんも何とか言ってよ」
「僕から言えることは何も…」
おいおい、朝霧も協力してくれよな、と思ったけれど、村野さんは頷いてくれた。
「でも、私の方こそ沢渡くんに迷惑をかけてたってことよね、ごめんなさい」
まだ昼食は途中だったのに、片づけて出て行ってしまった。