何が起きたのか?沢渡は廊下で倒れたきり、丸一日眠り続けている。もちろん、精密検査は行った。しかし異常は見られず、ただただ眠り続けているとしか言えない。
「結城さんもお戻りください。昨夜からお休みになっていらっしゃらないではありませんか」
沢渡の一大事におちおち眠っていられるか。目覚めたときに誰もいないとかわいそうだし・・・。
「ですが、この眠りがいつまで続くのかも分かりませんし、看護は私共仕官に任せていただいて・・・」
「私のことなら心配いらない。・・・もう少しここにいさせてくれないか」
・・・まったく、響は週末まで帰ってこないし、中間テストもあるっていうのに、どうなっているんだ。
あ、今睫毛が少し動いたような。
「沢渡」
・・・何だ、いつもの寝起きの悪さと同じじゃないか。唸りながら身体を左右に揺さぶっている。
「結城?」
「そうだ。おはよう」
「ここは・・・」
「医療室だ。心配したんだぞ、昨夜急に倒れて、それからずっと眠っていたんだからな」
「昨夜・・・?今何時?」
沢渡はまだ夢うつつの感じだ。ゆっくりと瞬きはしているが、どこを見るという感じではない。ただぼぉ~っとしている。
「え?試験はどうしたの?」
「しょうがないから、とりあえず欠席するとは連絡しておいた。受けられなかった分は、後日再試験だと」
ああ~とためいきが漏れた。試験のことを思い出したのなら、思考回路は復活したということかな?ドクターが具合を聞いているが、受け答えもしっかりしているし、一体何だったんだ。
「ねえ結城、電気をつけてくれない?」
沢渡が不意に言った言葉に、ドクターと俺は顔を見合わせた。・・・電気はついている。
「沢渡、これは何本だ?」
俺は咄嗟に沢渡の目の前に手をかざし、指をいくつか折る。
「え?暗くてよく見えない」
ヤバイ。ドクターがペンライトをちらつかせても、全く反応がない。
「沢渡よく聞け、電気がついてないんじゃない、お前の目が見えていないんだ」
・・・医療室は一気に慌しくなった。