5/24 (火) 16:00 不安

試験はまずまずかな?それよりも、別室ながら久々に行った学校が、まるで知らない場所のように思えて怖くなった。

ずっと休んでいることに対して、部活のメンバーやクラスメートからメールをもらっている・・・加藤に読んでもらったのだ、でもどう返事をしたらいいのかよく分からないので、そのままにしている。今までの僕だったら、しばらく旅行に、とか言えたのかもしれないけれど、試験まで休むわけないし、もうこれ以上嘘はつきたくなくなっている。

でも授業中にこっそり訪れた学校は、僕のことなんてまるで気にしないかのようにしんと静まり返っていた。授業中なのだから当たり前なのだけど、普段と違う面を知ってしまうと、何だか居心地が悪くなってしまう。

「僕の目はいつまでこうなのかな?」

帰りの車の中で、僕は加藤に聞いた。

「今、本当に殿下が世界中の名医を探してくださっていますし、医療仕官も連日打ち合わせをしていますから、そう長くは続きませんよ」

でも毎日何かしらの検査は受けているのに、まだはっきりとは原因が分からないみたいだ。本当に望みをつないでもいいのだろうか?一時的なものだからということで、僕は何から何まで仕官に頼っている。服を着替えるときも、食事のときも、歯を磨くときも、入浴するときも、眠りにつくときも。でも出来るだけ一人で出来るように練習する方向に進んだほうがいいのではないか。

「沢渡さん!」

宮殿に着くと、僕は加藤を振り切って一人で歩き始めた。

「倒れるまで手を出さないで」

勝手知ったる宮殿の中なら大丈夫、僕は前方と横を右手で探りながら、ターボリフトへと向かう。ほら、何のことはない、ぶつかることなく乗り込むことが出来、音声ガイダンスなのをいいことに、自信たっぷりで「自室」と締めくくる。

そしてターボリフトは静かに上昇し始めたが・・・待て、人の気配がする。普通なら他人とは乗り合わせたりしないはずだ・・・一部の例外を除いては。

この香りは結城だ、と振り向いた瞬間、「何やってんだ、お前は」と左肩をドンと押されて、無防備だった身体は壁に叩きつけられた。

「辛いのはお前だけじゃないんだ。それに、お前の目は必ずまた見えるようになる。だから自棄を起こすな」

「信じていいの?」

すると今度はきつく抱き締められて、何度も髪をなでられた。

「当たり前だ。俺が嘘をついたことがあるか?近々手術することになるだろうから、それまでのことだ」

手術・・・。僕の目は見えるようになるんだね。

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