昨日結城が一足早く帰ってきて、経過を報告してくれた。
「もう大丈夫だ。ただ、急にいろんなものを見ると神経に負担がかかるので、少しずつ慣らしていくんだそうだ。それでも明日には帰ってくるんじゃないか?」
よかった。これで安心して婚約会見もできるというものだ。・・・彼の今後のためにも、結婚までの一連の流れは見せてあげたいと思っている。沢渡くんはどんな人と結婚するのかな?
「にしても、アイツおかしくないか?宮殿での療養中は有紗さんと一緒にいる時間が多かったんだろ?なのに、あっちの病院に入院したら妙にホッとしやがって」
「それは、容態とは関係なく?」
「関係なく、だ。今回のことをきっかけにまた復活したのかと思っていたら、そうでもないらしい」
・・・ふ~ん、結城は有紗さんとうまくいくことを望んでいるんだ。
「違う、そういうわけじゃない。沢渡の考えが最近読めなくて困っているだけだ。目が見えなくなったことでもっと落ち込むかと思っていたら意外とそうでもなかったし、かといって仕事に意欲的になったというわけでもなさそうだし・・・全くお手上げだ」
結城は両手を挙げてため息をついた。・・・結城がここまでやるとは余程堪えているようだ。
「結局は沢渡くんが自分の手から離れていくのが嫌なだけでしょ?彼がちゃんと独り立ちできるように後押ししてあげるのが、父親の仕事なんじゃないの?」
「誰が父親だ、バーカ。何だよお前こそ、アイツのことに限っては取り乱す過保護な兄貴のくせに」
「でも僕は、沢渡くんには迷惑をかけていないと思うけど?」
「いつ俺がアイツに迷惑をかけたんだよ!それどころか、俺はお前の迷惑まで被っているんだけどな」
「え?だって、王宮顧問ってそういう仕事でしょ?」
コノヤロー、と結城が飢えたライオンみたいに今にも唸り声を上げそうな感じがおっかないので、僕は笑って両手を挙げた。
「ほらほら、明日は沢渡くんが帰ってくるんでしょ?早く帰って寝たら?」
「うるさいな、お前こそ、今週は婚約の儀なんだろ?婚約直前に破談なんてことになったらシャレにならないから、さっさと帰れ」
はいはい。あまり待たせてしまうとかわいそうだから、帰ろうっと。