でも偶然校内でばったり会ってしまうこともある。
先輩との電話は楽しいけれど、学校ではそれはまるで幻だったかのように必要最低限のことしか話さない。・・・いつものようにもっと気さくに話しかけてくれたら嬉しいのに。電話の時に優しい分、実際に会っているときには切ない気持ちになる。
と思っていたら、いきなり玄関で会ってしまった。・・・思いっきり目が合った。なのに、無視するのも変な感じがして・・・。
「おはよう」
そしたら、先輩のほうが声をかけてくれた。ただし表情は崩さず、真顔のままで。
「おはようございます」
だから私も沢渡先輩、そして朝霧先輩に、部長や兼古先輩に対してするような挨拶を返した。すると先輩方はそそくさと、2年生の校舎に向かって歩いていった。そう、今はこうするしかない。折角先輩が私のために素っ気ない態度をとってくれているのだから、私もそれに合わせるしかない。・・・でも、とても切ない気持ちになった。先輩に近づけたようで、実は全然近づいていなかった。これが現実。