でも昨日は意外と話せた。・・・話をするのは楽しい、けど、恋人めいたことには慣れていない。
先輩はお弁当持参でやって来る。二段式の長方形のお弁当箱に手の込んだ料理がズラリ。昨日の私のパンを見て気の毒に思ったらしく、私の分も持ってきてあげると言ってくれたのだけど、丁重にお断りさせていただいた。
「先輩は、どんなメニューが好きなんですか?」
このお弁当は、宮殿の仕官が作ってくれるという。
「何かな~?僕はあまり食べることに興味がないんだよね。だから食事は任せきり。ただ、バランスがよくないと体調が悪くなるみたいだから、学食でのメニュー選びには気を遣っているかな?」
それにしても、お箸の持ち方から食べ方まで、とても綺麗。大体、先輩ってまず姿勢がよくて、上品なオーラが出ていて、で、実際も穏やかな話し方、表情で、髪の毛が物凄く綺麗にまとめられていて・・・少し話がそれたけど、非の打ち所がない。こんな人が私の彼氏?
「・・・ん?どうかした?」
・・・いけない。うっかり先輩に見とれてしまっていた。
「いえ、先輩ってカッコイイなあって思って・・・」
「そう?僕は生まれたときからこうだから、よく分からないよ。・・・私のこと見ないで、とか言うくせに、僕のことは見るんだ」
あ・・・、そう言われると元も子もない。うわ~、恥ずかしい。
「すみません、思わず・・・」
「その僕のほうも、思わず君のことを見てしまうんだけど、許してくれないの?」
先輩も私と同じ気持ち?
「そうだよ。・・・いや、違う。僕のほうが君のことをより好きみたいだ。深雪のことを考えるとそれだけでドキドキして、会いたくなってしまう。そして実際目の当たりにすると、ここが学校じゃなかったらいいのに、と思ってしまう」
・・・それってどういう意味ですか?・・・そう思っていたら、先輩は隣の席に移動してきて、私の頬に触れた。
「深雪はかわいいよ。昨日はああ言ったけど、僕に愛されていることに関しては自信を持ったほうがいい」
そっとあごを持ち上げられて、キス。愛してるよ、の囁きに、身も心も溶けそうになる。