「沢渡さん、もう日付が変わってしまいましたよ」
昨夜、何とか深雪が理解を示してくれたのはよかったけど、当初の計画が狂ってしまっていた・・・柄にもなく、意外と残念がるのだ、あの大男は。
待っていてくれた加藤の運転で宮殿に戻ると、午前1時半。でもまだ大丈夫だろうと思って、自室に寄ってから結城の部屋に向かった。今日は結城の誕生日、どうやら彼女がいない気配なので、僕がお祝いしてあげないと。
しかし結城は、珍しくすでにベッドに入っていた。さてはふて寝しているのか、と思い顔をのぞき込んだのだけど、間違いなく寝ていた。それで何だか拍子抜けしてしまい、僕はそのままプレゼントを部屋に持ち帰ってきた。
夜が明けると、朝から試験、その後は深雪にも会わずにすぐさま議会、宮殿に帰ってきて殿下への報告、と、気づけば結城には会わないまま過ごしてしまっていた。
「殿下は結城とお会いになりました?」
ついでに伺ってみると、
「ああ、誕生日だよね。朝一でプレゼントを渡した後も、何度も顔を合わせているよ。・・・そうだね、沢渡くんが来ないと言って今日はご機嫌斜めで、みんな弱っていた」
・・・それは殿下特有の冗談ですよね?にしても、今日も残りわずかなので、何とかして捕まえなければならないのだけど、途中で他の政官から話しかけられるやら、有紗さんに会ってしまうやらで、困ったことになった。・・・明日の部活のことも心配で、自主練をしておきたいのに。
そして今日も残りわずかになったとき、結城が部屋に戻ってきた。
「何やってんだ、俺の部屋で」
「それはこっちのセリフだよ。わざわざ僕のことを避けてたでしょ」
「勝手に解釈するな、俺だって忙しかったんだよ。・・・で、プレゼントは何?もしかしてお前?」
もう、結城のバカ!冗談でもそういうこと言わない!そういうことを言うと、プレゼントをあげないよ。・・・でも仕方ない、今日の主役だから。
いつもカッコイイ結城のために、定番だけどネクタイを。
「敢えて正攻法で来たか。それとも、俺のことを束縛しようと思った?」
だから何でそうなる!いつまでも僕のことをからかって・・・というか素直じゃない。
「待てよ、俺が悪かった。礼を言わせてくれ」
結城は去りかけていた僕の腕をつかんで振り向かせると、優しく抱きしめた。
「お前が健康でいてくれる、それだけで俺は嬉しい。ありがとう」