7/19 (火) 23:30 誘い

有紗さんが教えてくれた名前は某国の王女のもので、ことは難しくなりそうだった。彼女には僕も二度ほどお目にかかったことがあり、やや年上で気が強そうな印象を受けた。その彼女と祐一は、悪いけど合いそうにない。しかし、相手国のことを思うと断れない。そしてもう一つ、そうなると舞に断りを入れなくてはならなくなる。それとも・・・、

「一緒に来る?」

一応言ってはみたものの、舞は固まってしまって、すぐには返事をしてくれなかった。

「貴くんがそういうことに誘ってくれたのは初めてじゃない?・・・本当は内緒にしているだけで、たくさん女の人に会っているんでしょ」

「何の話?会っていたとしても仕事だから、全然心配はないよ。ただ今回は・・・」

「貴くんって、有紗さまのことが苦手なの?」

・・・図星だ。どうも彼女とはいい関係を築きにくい。それはお互いの立場が微妙だからというのがまず一つ・・・陛下の実娘でありながら、仕事の階級的には秘書だから仕官であるが、外交が絡んでくると王女としても振る舞われる。そして二つ目には、相性の問題。何というか、どうしても話が盛り上がらないのだ。仕事のことではもちろんよく話をするが、プライベートでは友達にしたくない。・・・そして沢渡くんのこともある。

もし万が一、VIPと祐一の話が盛り上がったら、残された者同士どうしたらいいのか分からないので、舞にもいてもらいたいというか何というか。でも、王女が単なるファンだということであれば、仕事に徹することも必要になってくる。・・・おそらく祐一が好きそうなタイプではないはず。

「私は行かないからね」

舞は特に感情を込めることなく言った。確かに、特に舞が来なければならないという理由はない。

「祐一くんと一緒に、合コンを楽しんできたら?」

合コン・・・ってそんな。僕は別にその場所に居合わせるだけで、どうこうするというわけではない。

「ゴメンって。今回は国の面目も保たないといけないから、許してほしい。その代わり、埋め合わせはきちんとするよ。今度舞が好きな画家が来国するそうだから、そのときに会わせてあげる」

「ホントに!」

さっきまでの嫌味な感じから一転、彼女は満面の笑みで僕の首にしがみついてきた。

「でも、私が一番嬉しいのは、貴くんと一緒にいられることよ」

仕事を優先させるとは伝えてあるが、それ以外では僕も同じ気持ちだ。

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