議会は大揉めに揉め、議場内が騒然としてしまったために、一旦休会となった。・・・こういうとき、発言者としては王宮派でありながらも、皇太子としてはできるだけ中立の立場で、議会を円滑に進めなくてはならない。・・・こんな無様な様子をこれ以上国民のみなさんにはお見せできない。
僕は議員の控え室を回った。
「議会は議論を戦わせる場です。野次を飛ばしたり、余計な行動をしたりして、議論を妨げるのはおやめください。おっしゃりたいことがあるのなら、ルールに従って発言してください」
・・・でもあくまでも、感情的にならずに冷静に。
「あの、折角の機会ですので、直接殿下に申し上げたいことがあるのですが」
すると、3期議員を務めていらっしゃる方が立ち上がって、僕に声をかけた。
「何でしょうか」
「殿下、最近顔色が優れません。ゆっくりお休みなられてはいかがでしょうか?」
え?と思い反射的に顔に手を当てる。・・・いや、いいとは言えないけれど、悪くもないはず。
「私のことならご心配には及びません。忙しいのは事実ですが、もともと私は色白ですから、そのように見えるだけだと思います」
そうですか?と他の議員の方々も次々と僕の様子をうかがう。・・・いや、だから、ドクターの診察もこまめに受けているし、大丈夫なんですけど。・・・これは作戦かもしれない。そうやって僕を排除しようとしているのでは。
「それでも尚心配してくださるのでしたら、議会が円滑に進行するようにご協力ください。よろしくお願いします」
僕は笑顔を作って一礼し、執務室へと戻った。・・・とにかく頭に来ていた。僕のことを馬鹿にして。
「おい響、どこに行ってたんだ?」
「ねえ結城、僕の顔色はどう見える?」
「顔色?・・・興奮してて赤いな」
違う、そうではなくて!・・・聞いた僕が馬鹿だったか。そう思ったら何だか少し気が抜けた。
「もう少し日焼けしたほうがいいのかな?」
「はあ?お前どうかしたのか?陽に当たっても赤くなるだけだろうが。・・・余計なことにエネルギーを使わなくていい」
まあそうなんだけど。・・・言いたい人には言わせておけばいいか。