7/21 (木) 19:00 優先順位

後で事情を知った結城が、大いに怒っていた。

「いいや、お前はいつもより元気そうだ。そんなヤツらは放っておけ」

とは言え、竹内は前にも増してあれこれ手を施してくる。・・・殿下に何かあれば私の責任です、とか言って。それでも、竹内の場合はあくまでもさりげなく、そしてわざわざ口にすることなくやってくれるからまだいい。

夜、毎月放送している王宮の広報番組「H-K Time」の収録の打ち合わせのため、テレビ局を訪れた。僕がホストを務めて、王宮行事や政局の動向などを分かりやすく紹介しているのだが、今月はもちろん、今行われている議会の議題についてがメイン。ただ、放送日までにはまだ日数がありその間に進展する可能性が大きいので、そこは大まかな枠を決めておくだけにして、それ以外の要素、国民からの質問に答えたりとか、映像や音楽の打ち合わせをしたりとかする。

正直、議会の後だから疲れているが、この番組は僕が企画し軌道に乗せたという経緯があるから、責任がある。

会議室へ向かっていると、前方で何やら、女の子と仕官が揉めている声が聞こえた。

「だから、どうして今通っちゃいけないのよ。次の現場に遅れちゃうじゃない」

「それは分かりますが、少々お待ちください。間もなく殿下が通られますので」

「だから待てないんだって。私たち急いでるんだから~」

そんなに大声を出して・・・のおかげで分かった。最近テレビにとてもよく出ているお笑いタレントだ。

「申し訳ありません殿下。収拾をつけて参りますのでお待ちください」

と竹内は僕の行く手を遮ろうとしたが、僕がさっさと通れば彼女も通れるわけだから、足早に行くことにした。

「お急ぎのところお待たせして申し訳ありません。お先に失礼します」

あくまでも穏やかに、そして少し申し訳なさそうに・・・。

通り過ぎてからしばらくすると、背後がざわめき立ったのが分かった。彼女のスタッフ、そしてテレビ局の人間が、「早く謝罪してこい!」と彼女に対して大目玉を食らわせている。・・・礼儀を知らないのは困る、でも急いでいる気持ちは分かるので、少し悪いことをしたかな?という気持ちもある。

「殿下・・・」

「このまま会議室に行く。代わりに僕は怒ってないって伝えてきて」

竹内を行かせて、僕はそのまま進む。こんなことは僕が直接言うことではない。それでも、すぐさま記事になってしまうのだろう・・・。

「殿下、先日は試写会に来てくださり、ありがとうございました」

「とてもいい映画で、胸が熱くなりましたよ」

でもテレビ局は、いつもとは違う人たちと会えるから好きだ。

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