とりあえず、祐一を部屋に連れてきた。
「へえ、こんな部屋に住んでるんだ・・・」
とキョロキョロする祐一を無理矢理ソファーに座らせ、舞が出してくれたお茶にも手を出させず、付き合う気があるのかないのか問い詰めた。
「何だよ、折角舞ちゃんに会えたのに、下がらせることないじゃないか」
「話を逸らすな。こっちの方が先だよ」
睨み合うことしばし、しかしかなり酔いが回っているらしい祐一は、真剣に取り合おうとせず鼻歌を口ずさんでいる。
「付き合うかどうかはまだ分からないけど、とりあえずまた会うことにしたよ」
「どこで会うつもり?」
「レストランとか?」
な・・・なんということだ。沢渡くんと付き合っていたときは決して部屋以外では会おうとしなかった有紗さんが、外で、しかも有名人と会うとは・・・、何やら目眩がしてきた。有紗さんとしては大きな一歩を踏み出した、ということなのだろうけど、どうも僕には二人がデートするところがまだ想像できない。王宮側の人間としてゴシップ記事は避けたいし、祐一の友人として有紗さんは薦めたくない。
「俺だってそれなりのリスクは覚悟しているよ。でも友達として会うくらいはいいだろ?」
・・・でも実際問題、王宮が有紗さんを外に出すとは思えない。祐一にしても、今は酔っているからで、わざわざ面倒を起こしてまで会うとは思えない。
「・・・分かったけど、僕が紹介しただなんて言わないでほしい。たまたま同じパーティーで居合わせたということにしておいて」
「へえ、有紗さんのこと、好きじゃないんだ?何かあった?」
「僕との間には何もないよ。ただ合わないというだけ」
「・・・ねえ、舞ちゃんを呼んで」
「酔っぱらいには会わせたくない」
「大体、何でそんなに怒っているんだ?言いたいことがあるならはっきり言えよ。公明正大な殿下らしくもない」
そういう言い方をするなよ。僕の立場は実に微妙なのに。
「・・・有紗さんのやり方が気に入らない。このままで行けば、絶対何か問題を起こしてくれるに違いない、そこに祐一を巻き込みたくない」
「貴久がそこまで言うなら、ちょっと考えるけどな」
「ゴメン、代わりに今日は泊まっていっていいから」