朝起きて身支度を調えると、殿下はすでに朝食を取りにレストランに行かれているとのこと。・・・本当に殿下はいつお休みになっていらっしゃるのか。
そして僕も最上階にあるレストランに向かうと、・・・殿下はお一人ではなかった。向かい側の女性はどなただろう?
「沢渡くん、おはよう。今日もいい天気だね。・・・ああ、紹介するよ。こちらは友人のサラ。昔僕がこの隣国に住んでいたときに、同級生だったんだ。今は看護師をしているそうだよ」
初めまして・・・そうか、殿下は昔、近くに住んでいらしたのか。お父さまは転勤が多く、数カ国で生活したと伺ったことがあったが、その頃のご友人の話は初めてだ。言ってみれば、舞さんよりも古くからの付き合いということだ。
「ずっと連絡を取っていらしたのですか?」
「いや、引っ越しがあまりにも多くなったものだから、途中で連絡が途絶えてしまったんだ。それが後になって悔やまれたのだけど、職権を行使したらまた連絡が取り合えるようになった」
・・・殿下のご友人としては、看護師というのは平凡な職業だ。それでも連絡を取りたかったということは、それだけの理由があったということですか?
「あのね、沢渡くん。変な誤解を招かないように、こんなに朝早く、しかも公共の場所で会ってるわけ。僕たちは本当にただの友達なんだよ。サラと僕は一緒にクラス委員を務めていたのだけど、僕はサボってばかりでいつも怒られていた。・・・でも本当は、サラの手際があまりにもよかったから、わざわざ僕が出て行くこともないだろうと思って、わざとそうしていたんだけど」
「本当なの?貴くん!」
・・・あ、舞さんと同じ呼び方。しかも今の話でいくと、サラの方が先にそう呼んだことになる。
「そしてその手腕を僕はこっそり盗んだんだよ。そういう意味ではサラは僕の先生であり、戦友だったという気がする。・・・僕たちのクラスは本当に揉め事が多くて大変だったんだよね」
「そうそう。でもそれは、貴くんが協力してくれなかったからでしょ?」
・・・ああ、二人で勝手に盛り上がって。そういうことなら僕は立ち去りたいです・・・深雪の声が聞きたくなったから。
「失礼します」
ここ数日メールのやりとりはしているけど、電話はかけていなかった。今あっちは何時だろう?・・・いや、そんなことは気にしない。少しでいいから声を聞かせてほしい。
“こんにちは。昨日の風景ホントに綺麗でした。ありがとうございます”
・・・そんなことはどうでもいい。ただ、
「会いたい」