「深雪ちゃんのお父さんに、挨拶に行くんだって?」
忙しいのに、随分と楽しそうに結城は僕の部屋までやってきた。
「そうだけど、何?」
「俺もついて行ってやろうか?あの社長、頑固なことで有名らしいからな」
「結構です、自分のことは自分で処理します。・・・ったく、何しに来たの」
おいおい、この期に及んで反抗期かよ、と結城はますます楽しそうに、いつの間にか、僕の部屋に勝手に置いてあるワインのボトルとグラスを持ってくる。
「僕はいいよ。・・・前ので懲りてるから」
「え?俺の酒が飲めないって言うのか?それに、少しくらい飲めないと、格好がつかないだろうが」
「まだ未成年なので、丁重にお断りさせていただきます」
まったく、王宮の高官がこんなことでいいのか。
「そんな冗談はさておき、あの社長は、最近トラブル続きでイライラしているそうだから気をつけろよ。うまい具合に利用されることだけは避けろ。最初にしっかり釘を刺しておくように」
はい・・・、それは肝に銘じておきます。
「それもだけど、深雪に対して厳しいらしいことも気になるんだよね。・・・厳しい余りに無関心になっているみたいで、かわいそうなんだよ。普通、父親にとって娘はかわいいものだよね?」
「・・・俺はまだ分からないが、そういうものらしいな」
ウソだ。絶対親バカになりそう・・・想像に難くない。
「だから、僕が深雪の価値を認めさせたいと思っているんだけど、どうしたらいいかな?積極的に意見したほうがいい?それとも様子を見たほうがいい?」
「とりあえず様子を見ておけ。どうせまだお前らの付き合いは公表しないことになっているんだから、その間にやきもきさせとけ。そうすれば自然と深雪ちゃんにも優しくなるだろう・・・いや、結婚しろと口やかましくなるかもな」
結婚・・・。そんな・・・、それはまだ先のことで・・・。
「お前は、深雪ちゃんと結婚したいのか?」
「そんなことまだ考えてないよ。付き合うだけでもいっぱいいっぱいなのに」
「そうだよな、まだ若いもんな。せいぜい仲良くするんだぞ」
・・・今回、結城は僕たちのことをとても好意的に見ている。この違いは何なのだろうか?
「え?・・・それはもちろん、深雪ちゃんのことが好きだから」
・・・あのう。