9/11 (日) 21:30 ダメ出し続きの男

今日はラウンジで結城と夕食。何せこのところめまぐるしい毎日を過ごしているので、リセットする時間が必要・・・となると、結城と過ごすのが一番手っ取り早い。

「正直凹むよ。お互い好き同士なのに、どうしてうまくいかないのかな?」

順調に進みかけると、何かしらの障害が出てくる。もう少しの辛抱だとは思っていても、忙しい毎日の中で彼女だけは心のオアシスになるだろうと思っていただけに、残念な気持ちになる。

「あのな~、全国、いや、全世界が注目している若きエリートの第一声がそれとは、お前も所詮凡人だな」

「ほっといてよ。・・・でも結城だって気になってるでしょ?」

「うん、気になるね。深雪ちゃんはお前と付き合い始めてから笑顔が減ったと、もっぱらの噂だ」

「どこで仕入れてきたんだよ、それ!」

「教えない」

・・・ったくもう、でもそれは僕のせいだけじゃなくて、役のこととも関係があるわけで。

「それに対し、お前はすっかり演技上手になったよな。短期間にこれほど多くの取材を受けたのに、お前のことを悪く言ってるものはほとんどないと言っていい。世間の人からの評判も上々だ。よく頑張ってるよ」

・・・ありがとう。何だか妙にグッと来てしまった。

「だからもう少し頑張れ。文化祭まであとわずかなんだろ?今回は学外からもお前や朝霧目当てで多くの人が訪れることになるわけだから、中途半端なものは見せられないだろ?・・・いつも言っているが、特に最初は肝心だ。お前が演じる姿を見たことがない人たちを驚かせるような出来にしないと、見かけ倒しね、なんて言われて終わってしまう。・・・それはお前にも十二分に分かっているはずなのに、また俺に言わせるとは、余程深雪ちゃんに弱いと見える」

ああ~、どこに行っても僕はダメ出しをされてばかりだ。そう、今日結城と一緒にいるのも、気持ちが萎えてしまいそうになるのを食い止めるためなのだろう。

「もう、頼むからあんまり凹まないでくれ。俺じゃ満足できないのかよ」

はぁ?どの口がそんなことを言うんですか。

「食事だけで気が済まないのなら、ドライブに連れて行ってやろうか?何だったら・・・そのあとも」

「それは結構です!・・・けど、ドライブには連れて行ってほしいです」

ああ、またしても結城のペースに乗せられてしまい、・・・でも半ば乗せられてしまうことを期待しているのだから仕方ない、ドライブに連れて行ってもらうことにする。殿下は車の免許を取らせてもらえない、と何かにつけ嘆かれるのだけど、僕もダメなのかな?

「運動神経のことは心配していないけど、響みたいにフラフラ出歩くような真似をするようになったらとらせない」

・・・脱走を試みようとはしていないから、大丈夫かな?

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