深雪ちゃんに続き舞を送っていったあと、やむを得ず、しばし部屋に上がり込む羽目になった。
「どうして深雪ちゃんには、あんなに気の利いた優しい言葉が言えるわけ?」
ちょっと待って、矛盾してない?お互い軽口を叩き合う関係のままでいようって、つい最近確認したばかりじゃないか。
「深雪ちゃんはまだ高校生だからだよ。それに、沢渡くんから相談を受けているから、他人事には思えなくて・・・」
「どうせ、結城さんより点数を稼ごうと思ってしたことなんでしょうが!」
え?深雪ちゃんに嫉妬しているわけじゃないの?・・・確かに、よく見ると怒っているというよりも呆れている。
「いい加減やめなさいよ、結城さんとバトルを繰り広げるのは。本当に大人げないわよね。見てて恥ずかしいわ」
・・・そういう展開に来るとは思ってもみなかった。何だか僕のほうも急に訳が分からなくなってきたので、とりあえず謝る。
「でもどうして結城のことには怒るわけ?別に半分遊んでいるだけというか、ストレス解消というか、他意はないんだけど」
「こっちのほうこそ、どうして?って感じよ。仕事は完璧にこなして、国民からも愛されていて、申し分のない人なのに、どうして結城さんと一緒にいるとそんなに砕けてしまうんだか、理解できないわ」
いや・・・、それは・・・、何故か自然とそうなってしまうだけで・・・、僕にだってよく分からない。
「別にいつもふざけているわけじゃないよ。ちゃんと仕事の話をしたり、お互いの相談に乗ったりもしている」
「それは分かっているけど、特に沢渡くんの前だとふざける傾向にない?それはどうして?」
え?・・・沢渡くんまで絡んできた。・・・何かがおかしい。
「ねえ、ちょっと待って。これは別に怒ることじゃないはずだよ。基本的に僕たちは、王宮の仲で数少ない仲間なわけで、更に男が何人か集まれば自然とバカな話をするようになるわけで、・・・舞だって、女友達だけで集まれば僕には聞かせられないような話だってするんじゃないの?僕はそのことについてとやかく言う筋合いはないし、言うつもりもないよ。だから舞も放っておいてくれる?ただ、舞が僕たちの悪ふざけの図を見たくないっていうのなら、これからは少し気をつけるけど・・・」
「そういうことじゃないの。貴くんは昔からふざけているところがあって、そういう人なんだってことは分かってるんだけど、全然変わらないのもどうなのよ?って思ったりもするわけで・・・」
何なんだ、一体。今更そんなことを言われても・・・。とりあえずあまりふざけるなってことなのだろうけど・・・、そんなに怒らせるようなことかな?・・・あ、こういうのが、俗に言うマリッジブルーなのかな?