部長のお宅で行われている打ち上げの席では、兼古先輩がとにかくゴキゲンで・・・絶対アルコールが入っているに違いない、やたら僕の側にくっついてくる。
「ホントに、沢渡は綺麗だったよな。あのまま打ち上げに来てくれればよかったのに」
「嫌ですよ。あれはもう終わったことです、封印しておいてください」
「そうはいくか、俺の最後の舞台の思い出として一生忘れない」
あちゃ~、参ったな。どうしようもない。
「お前、頬は大丈夫なのか?見せてみろよ」
「すぐ冷やしたので、もう大丈夫ですよ。あとはメイクでごまかせますし」
「それにしてもあの結城さん、一体お前の何なんだ?血相変えてやって来て、沢渡を連れ出して」
「ほら、人前に出る仕事だから、王宮の人はみんな外見のことには厳しいんですよ。去年、望月先輩に殴られたことがあったんですけど、結城は胸ぐらをつかんで怒ったらしいですよ。『顔だけはやめてくれ』って」
「それ、いつの話だ?」
・・・これこれ、と事情を説明する。
「それにしても、結城の愛情は行き過ぎてると思うこともあるんですけどね」
「・・・そうか、結城さんに愛されてるのか」
「あの、別に怪しい関係じゃないですよ。・・・でも、結城がいると落ち着くのも事実です。悔しいけれど、結城は僕の扱い方を全部知ってますからね」
「それで、希ちゃんは男を挑発するようなポーズを覚えたんだ」
「違いますよ!・・・もう、先輩のほうこそ、そうやって嫉妬するところは結城にそっくりですよ。いい迷惑なんですから」
「だってお前を見てると、放っておけなくなるんだもん」
・・・そんな、誘うような目をしないでくださいって。
「先輩、ただ酔いが回ってるだけですよ。折角今日は、今までお世話になったことに対してお礼を言おうと思っていたのに、この分じゃちゃんと伝わりそうにないから、卒業式の後にしますね」
「そのときは女装して登場しろよ!先輩の言うことは絶対だからな!」
あ~、あ~、どうしてこんなことに。飲み過ぎですよ。
新しい部長は村野さん。でも僕も朝霧も忙しくなってしまったので、今後の活動が心配だ。新作はいつ上演できるだろうか?