舞のことは心配だけど、文化祭に行ったときはいつもの様子だったし、彼女自身も「マリッジブルーかな?」なんて明るく言っていたので、毎日会いに行ったりはしていない。
それよりも、舞が実家に戻っていることを知ってか知らずか、友達から、会えないか?との連絡が来る。結婚前に男同士の話をしておこうとか何とか、忙しいとは言っているのだけどたまにはいいかという気もして、少しだけ会うことにする。・・・一番気になるのは、やはり祐一。
「あれから会っているのか?」
有紗さんとの関係は?
「何回か会ったよ。・・・でも、彼女にはしたくないタイプだったな」
「どこが、どんな風に?」
「俺、あんまり重いのは好きじゃないし」
・・・おかしいな。沢渡くんとうまくいかなくなったわけは、淡泊すぎるからだと聞いていたが。路線変更したのかな?
「だから、はっきり断ったよ。友達としてならいいけど、付き合えないって。そしたら泣かれちゃって・・・、そういうのも得意じゃないんだよな。でも正直言ってよく分からなかった。あなたがすべて、みたいなことを言ったかと思えば、俺からの誘いを平気で断ったりしたし。参ったね」
「でも女の人って基本的に気まぐれじゃない?舞も急に反乱を起こすし、訳が分からない」
「・・・よもや、お前の口から“気まぐれ”なんて言葉を聞くことになるとはな。お前が一番気まぐれじゃないか」
祐一は皮肉たっぷりに言った。・・・そんなことないと思うけど。
「お前が気まぐれじゃなかったら、この世に気まぐれな人間などいなくなる。仕事はきちんとしていると思うけど、舞ちゃんのことに関してはどうなんだ?俺まで心配になるだろうが」
「でも、舞との付き合いは最初からこんな感じだったから・・・」
「そりゃ、俺だって今更結婚が破談になったりはしないと思うけど、舞ちゃんの話はちゃんと聞いてやれよ」
「分かってるよ。これからは一緒にいる時間が増えるから、聞いてあげられる。・・・祐一は、結婚について考えてる?」
バンドの活動は非常にうまくいっているようで、もうすぐまた新曲がリリースされるみたい。
「いい人がいればするけど、今はバンドのことが大事だよ。でも恋愛の曲を書こうと思ったら恋愛をしなければならないのに、女の子と歩いているだけでファンの子たちは嫉妬するから、どうしたものかと戸惑うことはある」
「え?祐一は、あれで隠そうとしているわけ?」
・・・よく週刊誌に撮られているじゃないか。
「俺も普通の男だってことを忘れないでほしいなって思って」
・・・でも、載るたびに相手が違うのはどうかと思うけど。