仕事から帰ってきたら、小腹が空いてしまっていることに気づいた。
「何を召し上がりますか?」
竹内が用意してくれようとするのを断って、冷蔵庫の中を漁る。
「う~ん、雑炊にしようかな~。・・・竹内も食べない?」
「そういうことでしたら、ご一緒させてください」
「了解。その代わり、ご飯を調達してきてくれないかな?」
「かしこまりました」
最近はなかなか作れる機会が減っているけれど、自分で作ったほうが何が入っているのかを確認することができるし、いい気分転換にもなる。それに、仕事柄おいしすぎる料理をいただくので、普段はヘルシーな食生活に努めたい。薄味で、野菜をたくさん入れて・・・。
「シェフから分けていただきました」
「お帰り。じゃあ、テーブルの用意をお願い」
普通は上司と食事を共にすること、ましてや上司に料理を作らせるなんてことはあり得ないことだろうけど、竹内に限っては許される。
竹内とは5年以上の付き合いになる。僕が一番最初に役職をもらったときについてくれてからずっとなので、気心が知れている。でも、いつも僕に付き合わせてしまっているために、未だに独身なのが気にかかるところで・・・。
「竹内は結婚したい?」
いきなり何をおっしゃるのですか?と目一杯たじろいでいたが、気を取り直すと、
「積極的にではありませんが、ご縁があればぜひお願いしたいです。ただ、王宮に関わる人間でないと、私の仕事を理解してくれないのではないかと思います」
・・・それは言えているかもしれない。王宮でも、特に僕の場合は出張が多く、時間も不規則になっている。普通の人とではすれ違いばかりの生活になってしまいそうだ。
「今までに良さそうな人はいた?」
「あの・・・、ありがたいことに、非常に忙しくさせていただいておりますので、それどころでは・・・」
・・・僕のせい。
「でも、いつも僕に世話を焼いてくれているから、くつろげる場は必要だよね」
「いえ、殿下があまり突飛なことをおっしゃらなければ、私の仕事はそれほど大変ではありません」
・・・また、僕のせい。