10/3 (月) 14:00 あなたに会いたくて

無投票で生徒会長に就任してまた一つ肩書きが増えてしまった彼の二言目は、決まって、「大丈夫だった?」

彼は私たちの交際を公表してからずっと、私の身を心配してくれている。ただでさえ学年が違うので学校ではなかなか会えないのに、仕事のため、学校に来られるのは週の1/3程度になっている。でも1年生は基本的に彼のことを雲の上の人みたいに思っているみたいなので、私に対して何かしてくるということはないのだけど、怖いのは先輩方。特に2年の先輩。最近は、彼が学校に来ていないときに学食に行くのは怖いので、いつも部室で食べるようにしている。

部室といえば、3年生が引退して新しく村野先輩が部長になった我が演劇部は、基礎に立ち返っての練習が続いている。それは彼と朝霧先輩が多忙でなかなか部活に来られないというのとも関係があるのだけど、この機会に更に表現力に磨きをかけようというのが本来の目的。昨年も、清水先輩のもと、月ごとに様々な題材に取り組んでみたそうで、今年は第2弾として、まずは演劇に限らず多くの芸術作品に触れることと、基礎体力をつけること、発声をしっかりすることから実践していく予定だそう。

「深雪が沢渡先輩と付き合ってるなんて、未だに信じられないんだよね~」

事あるごとに若菜は言う。今日も、来月に行く遠足のお知らせの紙をもらったのだけど、学年問わず行き先を選べるということだったので、彼に聞いてみようかな~と思っていたら、若菜がやってきた。

「私はちょっと慣れたかな?・・・でもそれと共に会いたくなっちゃって困る」

前回彼に会ったのはいつだっけ?一応毎日朝晩電話では話しているけど、ぎゅ~ってしてもらいたくなってる。でも彼のほうも、会いたいけど我慢してるって言ってくれるし、のほほ~んとしてて演技が上達していなかったらまたガッカリさせるし、とりあえず部活と勉強は頑張ってるつもり。

「先輩、遠足には来るよね?・・・だって違う学年の人と接することができる数少ないチャンスだもん!ここで来なかったら、愛情を疑っちゃうよね」

「でも、仕事だって言われたら何も言えなくなっちゃうよ。・・・テレビで見るときもカッコイイからいいけど」

・・・ホントは面と向かっているときのほうが好き。

「ねえ、深雪は先輩と最後までしちゃったの?」

・・・そんなこと、他の人もいる教室で聞かないでよ。そればっかりは思い出すだけで恥ずかしい。

「そうなんだ・・・、やっぱりちゃんと付き合ってるんだね。・・・痛かった?」

ノーコメント。とにかく恥ずかしかった・・・けど、優しくしてくれたことも覚えてる。私のことを心配してくれて、優しく抱きしめてくれて、髪を撫でてくれて・・・、会いたいなあ。

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