10/8 (土) 19:30 久々のデート

迎えに来てくれた彼は、そのまま雑誌に出ていそうなおしゃれなファッションだったんだけど、それよりも気になったのはヘアースタイル。いつもよりは高めの位置でまとめ、毛先を複雑に絡み合わせて短く左右に垂らしている。

「その髪型どうなってるの?」

玄関外の階段の段差を利用して見てみるのだけど、よく分からない。そうこうしているうちに、本人から、

「会うなり抱きしめてやろうと思っていたのに、いきなりそれはないんじゃないか?」

と呆れられてしまった・・・ゴメン。その分、車に乗り込んだら、息ができなくなるほどきつく抱きしめられた。

「会いたかった」

その囁きと熱いキスに、身も心も蕩けそうになる。私も会いたかった・・・、抱きしめられていると落ち着く。

それでも健全な若者である彼は、とてもお腹が空いていたらしく、予定通りやって来たレストランでは主食をおかわりする勢いだった。

「今は何に忙しいの?」

「もうすぐ殿下の結婚の儀だろ?そのとき、社交的な殿下のこと、数多くの外賓がお祝いに訪れるんだよね。でも僕にとっては初対面の方が多いから、どんな人なのか予習したり、あとは、宮殿で行われる披露宴では朝霧と2曲ほど演奏することになっているからその練習をしたり、結婚の儀のあと殿下は数日のお休みをとられるから、そのための用意をしたり、そろそろ予算案について詰めて行かなきゃいけないから、情報収集に追われていたり・・・って、こんな話を聞いて面白い?」

え~、面白いよ。単純に、忙しい、の一言で片付けられるより、その理由を聞いておいたほうが、今頃何をしてるかな?なんて想像するときの参考にもなるし。

「でも考えてみれば、今は役のことを気にせず純粋に恋人同士として過ごせるから幸せだよ」

それは私も思ってる。

「希がいつもニコニコしてるもんね。その笑顔を見れて、私も幸せ」

「それはこっちのセリフだよ。公演前はナーバスになっているから、笑ってくれないじゃない?でもそういうときに、笑って、なんて言えないし、本当に困る」

あ~、結局は私のせいってわけ?でも文化祭の公演はとても好評だったみたいだから、それはよしとしないと。

「その様子だとテスト勉強も順調みたいだな。じゃあ場所を変えて・・・」

「ちょっと待って。折角楽しいひとときを過ごしているのにテストのことなんて思い出させないでよ。大体、希はいつ勉強してるのよ」

「・・・そんなの、授業中に決まってるだろ」

・・・って、最近授業にもほとんど出てないじゃない。こういう人は作りからして違うんだな~。困っちゃう。

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