殿下がご結婚されたことは自分のことのように嬉しくて、部屋に帰って来るなり深雪に電話をかけていた。
“私も、今日は一日中テレビを見てたよ。殿下も舞さんも本当に幸せそうな顔をしていらして、羨ましかったなあ~“
もちろん、僕以上に夢見心地になっているのは深雪のほう。殿下は、「結婚するといってもそれほど生活が変わるわけではないし、注目を浴びるのは舞ばかりだし、男は辛いよ」なんて冗談でおっしゃっていたけど、僕は同時に、「沢渡くんもいずれは結婚するだろうから、王宮式の結婚がどんなものかよく見ておきなさい」と以前言われたことを守ろうと、殿下ばかりを観察させていただいた。やはり、今回の主役は舞さんのほうで、殿下は舞さんを立てるのと同時に、来賓の方や国民のみなさんへの心配りに徹していらした。
「深雪は結婚についてどう考えてる?」
・・・単刀直入に聞いたのがいけなかったのか、電話の向こうではしどろもどろになっている。
“それは、希の意見を先に聞いてからじゃないと答えられないよ。私はまだ高1だし、結婚できる年齢でもないし、分かんないよ”
それは僕も同じだ。我が国では男性は18歳、女性は16歳にならないと結婚できない。そんな年齢上のこともあるけれど、僕としては、深雪のことを結婚相手としてはまだ見ていない。もちろん、彼女はかけがえのない人だ、そして僕は彼女の前では自然体でいられる。でもまだ16歳だ。殿下は今28歳でいらっしゃるから、その点からも結婚について考えるのは早すぎると思っている。
「別に一般論でいいよ。女の子はやっぱり、結婚への憧れが強いのかな?」
“・・・少なくとも私は、いつか凄く好きな人と結婚して子供を産んでみたいと思ってるよ。・・・今日は、希が殿下みたいな礼服を着たらカッコイイだろうなって想像してた”
「え?深雪が舞さんみたいな礼服を着ているところじゃなくて?」
“え~、だってあの服は王宮の人しか着られないでしょ?”
・・・僕と結婚することになったら深雪が着るんだよ。
「僕は、深雪が着たら似合うだろうなって思いながら見てたよ」
“ウソ・・・希”
そんな日が来るのかな?いつか来たらいいな。