10/18 (火) 22:00 変化

今日はクリウスの同級生たちとのパーティー。舞は薄い紫のドレスがよく似合っている。・・・けど、僕たちのために集まったというよりは、僕たちの結婚をきっかけにして集まった同窓会といった雰囲気だ。

「響くんと舞は一緒にいるのが当たり前だったから、今更結婚したところで驚かないよね」

「そうそう。貴久が皇太子ってことも未だに信じられないくらいだよ。もちろん見えないところではちゃんとやっているんだろうけど、テレビで見てても、高校の頃と全然変わってないからな」

「それ分かる。いや、変わらないのは祐一もじゃないか?この二人は本当に高校の頃からずっと好きなことだけやってるって感じで、羨ましいよ」

「そんなことないって。楽しいことばっかりじゃない。・・・でもその辺はみんなお互い様なんじゃないか?」

僕もそう思う。別に僕たちだけじゃなく、みんなそれぞれの分野で活躍しているし、成功するためには苦労はつきものだし。

いつの間にか、男は男同士、女は女同士で集まって、それぞれに話を盛り上げていた。・・・僕たちが着飾って来た意味はあったのだろうか?

僕たちの間では、我が国だけではなく世界の経済についての話で盛り上がっていた。それは、普段活躍の場が違う人間がこうして集まる機会は滅多にないからだろう、とは思うのだけど、僕としてはしばらくは仕事から離れるつもりだったので、何だかあの頃とは変わってしまったんだな、と思ってしまう。

「変わってないのは、俺たち二人だけなのかもな?」

少々息抜きをしたくてバーでたたずんでいると、祐一がやって来た。同級生の中で今でも一番会うのは祐一で、いつも僕たちは特に違和感なく話せているからこれが普通なのだろうと思っていたら、僕たち二人のほうがみんなからは浮いているということが分かった。・・・そこは二人で苦笑いするしかない。

「俺、こんなんで、みんなの心をつかめるような詞を書けるのかな?」

「それ、僕も考えた。これで、国民の代弁者になれているのかな?って」

そこへ、舞と他の女の子たちがやってくる。

「折角二人が揃ったんだから、一曲歌ってよ。お店の人が、ギターならあるって言ってくれてるし」

はみ出し者になってしまった僕たちが名誉を挽回するチャンスは、これしかない。・・・あ、丁度歌いたい曲がある。

少々打ち合わせをした後、祐一がアコギを抱えて僕たちのステージが始まった。そう、いつも言えないようなことも、歌だったら届けられる。高校の頃は、舞のことを思って詞を書き歌っていた。でもバンドを辞めてしまってからは、きちんと言葉で気持ちを伝える機会が少なくなっていった。・・・だから今、きちんと伝えておきたい。

僕が歌った後、祐一は先日リリースされた、僕たちへの曲を歌ってくれた。これで、僕は舞と出逢った頃のことを一気に思い出した。・・・変わっていなくて何が悪い?変わらなければいけないところもあるけど、変わってはいけないところもきっとあると思う。

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