10/22 (土) 23:00 もう一人の家族

今日は出張先で一人の夜を過ごす。・・・が、その前に、

「今夜は眠れそうですか?」

舞とはさっき電話で話した。今日は取り立ててトラブルはなかったので眠れないことはないだろうけど、肉体的にあまり疲れていないので今のところは眠気を感じていない。

「ちょっと凝りをほぐしてもらえたら眠れそうかな?・・・最近僕たちに遠慮しているでしょ。でも身体の管理は竹内に任せているわけだから、必要な時は無理矢理入ってきていいよ」

この頃は薬に頼らなくても眠れるようになったのだけど、以前よりは疲れやすくなっているのが気になる。それは過労のせいなのか、年のせいなのか・・・。健康診断では、案の定いくつかの項目で基準値から外れてしまっていたので気をつけなくてはいけないのに、最近竹内はすぐさま引き下がる。

「もしかして、竹内も検査に引っかかった?」

「いえ、私は殿下ほどではありませんでしたから大丈夫ですが、・・・やはり、殿下と舞さんはお似合いですので、入り辛いですよ。最近は舞さんも殿下の健康管理についてはかなり勉強なさっているので、まずは舞さんから殿下の変化を伺うことにしているのですが・・・」

「ねえ、一つ言っておくけど、舞はいつも僕より早く寝て、いつも僕より遅く起きているよ。それに何だかんだ言って竹内と一緒にいる時間のほうが長いわけだから、何か気づいたことがあればすぐに言って。信頼しているから」

「かしこまりました。そのお言葉にお応えできるように励みます。・・・では、うつぶせになっていただけますか?」

そのまま眠っても大丈夫なように、ベッドにうつぶせになる。・・・僕は別に仕事に関しては管理されても構わないし、竹内に隠すことは何もない。僕には自分に甘いところがあるので、時間の制約がなければだらだらして何もできずにいることがある。だからスケジュールはきっちり組んでほしい、でも仕事が終わった後には多少のわがままは許してほしい、と伝えている。

「竹内は学生のときの友達に会ったりする?」

「いえ全く。私はプライベートで宮殿を出ることはほとんどなく、同窓会にも出席したことがありません。ただ、何人かは政治に関わっているので顔を合わせることはありますが、会釈するだけです」

「え~、誰?教えてよ」

そんな話、聞いたことがなかった。

「いいんです。今の話は聞かなかったことにしてください。顔を合わせたところで気まずいだけですし、私は殿下にお仕えさせていただいていることを誇りに思っていますから、それ以上のことは必要ありません」

今までにも有給を申し出てきたことすらなかった。彼は僕に全てを捧げてくれているのだ。彼の生活は保障してあげないと。

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