10/24 (月) 12:30 変化

ヴァイオリンコンクールで優勝してから、僕の生活は大いに変わった。それをきっかけにテレビに出るようになったし、リサイタルも開くことができた。・・・やっと僕の念願が叶ったわけだ。

でも刺激的な生活の反面、今までの生活も大事にしなければならない。王宮からは、チヤホヤされてすぐ調子に乗ってはいけない、堅実な生活をするように、と何度も釘を刺された。有名になったからといって試験が待ってくれるわけではなく・・・逆に注目を集めている今は特に、学業との両立ができることをアピールしなければならないと、沢渡にはしごかれた。確かに、沢渡は財務長官になってからもそう変わりがない。だから僕も、普段通りにしないと。

とか言いながら、沢渡は今日も学校に来ない。今まではいつも沢渡と一緒にいたから、そうなると休み時間は自ずと一人で過ごすことになる。有名になったことであれこれ声をかけてくる人たちはいるけど、無理に他人に合わせなければならないくらいなら一人でいたほうが楽だ。

「朝霧くん、相談があるんだけど」

ただし、村野さんが声をかけてくる時は別。・・・ううん、多分僕が一人でいることが多いのが気になって、声をかけてきてくれているところもあるのだろうけど。

「部活は、やっぱり二月のコンクールが当面の目標なんだけど、沢渡くんも朝霧くんも忙しいじゃない?どうしたらいいかな?」

演劇は僕に大きな刺激を与えてくれている。ヴァイオリンの先生からも、演劇をやるようになってから表現力が豊かになったと言われているし、僕自身も演じることは凄く楽しい。

「沢渡は急に仕事が入ってくることがあるから何とも言えないけど、僕は絶対出るよ。だから、2パターン用意してみたらどうかな?沢渡が出られる場合と、出られない場合と」

「なるほどね。それもだし、沢渡くんが出る出ないとは関係なく、あれこれチャレンジしてみたほうが精神衛生上もいいかもね。・・・ほら、今までの経験上、一つのことに没頭しすぎると、トラブルが起きるから」

あ・・・、上柳さんといい、沢渡といい、深雪ちゃんといい・・・。

「脚本についてアイディアは浮かんでるの?」

「うん、いくつかあるんだけど・・・、沢渡くんからは、あまり主役と脇役を分けない作品も考えてほしいって言われてる。となると、群像劇だよね。・・・沢渡くんの気持ちも分かる」

要は、沢渡だけが注目されるような作品にはしたくない、と。

「ううん、朝霧くんのこともよ。・・・朝霧くんってホントにしっかりしてきたよね。やっぱり有名人は違うわ」

・・・僕はまだそんなことないって。沢渡からの伝言を伝える役目になっているからしっかりしないと、という自覚は以前より湧いてきたけどね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です