宮殿では入宮試験があり、たまたま受験会場近くの通路を通ったときにちょうど休憩時間だったらしく、近くにいた受験者たちが一斉に立ち上がって礼をしてくれたのはなかなか壮観だった。
「今年の受験者はかなり増えた。中でも高卒予定者が多いのは、お前の影響だな」
最近時間があるときには深雪に会いに行っているので、結城と夕食を取る機会が減ってしまったが、今日は結城からぜひにと夕食に誘われた。どうやら、入宮試験のことで愚痴らずにはいられないらしく、いつものようにラウンジで、ではなく結城の部屋でという徹底ぶりだ。
「有能な人材は見つかった?」
「どうだか。記念受験をしに来るヤツが増えただけかもしれないな。大体、俺のことを知らないで受けに来るなんて間違ってるだろ。どれだけ勉強不足なんだよ」
「別に一次試験から張り切らなくてもいいんじゃないの?面接から顔を出すとか、逆にもっと顔を売っておくとか」
「そういう問題じゃないんだよ。一緒に仕事をすることになる人間だろ?最初からしっかり見ておきたいんだよ」
「でもこうして僕に愚痴るくらいだったら、わざわざ見ないほうがいい気もするけど?」
「・・・頼むからやめてくれよ。お前まで俺に食ってかかってくるなって」
あ・・・、そんなことを言い出すなんて、よっぽど堪えたんだね。
「何か僕にできることはある?今は精神的に余裕があるから大丈夫だよ」
「なら抱かせろ」
「何言ってんの」
バーカ、別に脱がしたりしないから、と腕を引き上げられ、きつく抱きしめられた。・・・いやいや、十分、僕の意志は無視していますけど。
「お前、また背が伸びたな。・・・でももうこれくらいでいいぞ。あんまり伸びるとかわいくなくなる」
「もう、立場が逆転するのが嫌なだけでしょ?大丈夫だって、年の差は埋められないから」
「うるさいな、ちょっと黙ってろよ」
「あの、僕は人形じゃなくて人間なので、言葉や態度に反応するんです」
「分かった。・・・干からびてる俺にエネルギーを補充して。・・・キスさせて」
「キスだけだよ」
僕が目を閉じると、唇を割って舌が侵入してきた。・・・早く恋人を見つけなよ。でも悪くない・・・悪くないどころか、僕まで甘い感触に痺れを感じている。
「今夜は泊まっていけよ。いろいろ話したいこともあるし」
・・・分かりました。御意のままに。