いつもは演じる側だけど、今日は部長の村野さんの隣で見る側だ。
「何も言わないから、とりあえず見て」
深雪と朝霧から何となく話は聞いていて、台本も読んでいるのだけど、どういう風に仕上がっているのかは見てみないと分からない。朝霧がコミカルな役、というのはどうだろうか?
と思っていたのは最初だけで、大いに笑わせてもらった。撮影したビデオでは僕の笑い声だけが目立ってしまうのではないかと、心配になったくらいだ。重ね合わせてはいけないと思いつつも、普段は穏やかな朝霧がコミカルな芝居をしているのが単純におかしくて。
「沢渡くん、どうだった?」
部長はOKを出すとすぐに、みんなの前で僕の意見を求めた。
「凄く間が良かったから面白かった。稽古の成果が出ているよ。ただ一つだけ、・・・のシーンは・・・」
褒めるだけではなく、気になったことはきちんと伝えておいたけど、全体としての出来はとても良かったので、僕ももっと部活に参加したくなった。
「次は僕も頭数に入れておいて。・・・ただ、端役でいいけど」
「贅沢な役者ね。端役なら端役らしく、目立たないようにしてね」
はいはい。次の発表は年内にと言うことだったので、時々なら来れるだろう。
それはそうと、
「そのピアス、してるんだね」
部活が終わってから、深雪を学食に連れ出したときに言ってみる。
「うん、でも毎日同じピアスというわけにはいかないから、昨日はしなかったんだけど」
「評判は?」
「若菜には好評、でもクラスの子たちは見て見ぬフリ。・・・それでもいいの、私は気に入っているから」
そうか、ありがとう。このところ周囲の状況は、深雪のことを無視する方向へと進んでいるらしい。それはそれで深雪を居心地悪くさせることになるのではないかと危惧したのだけど、もともと社交的なほうではないし、目立たないように過ごすことは全然苦ではないとのこと。
「でもね、今日は希が凄く笑ってくれていたことが嬉しかった。最近忙しいんでしょ?テレビを見ていたら、ちょっと顔がこわばっているような気がしてたから」
ホント?気をつけないと。これから議会が近づくにつれて、まだまだ忙しくなる。
「気づいたことがあったらどんどん言って。深雪にしか気づけないことがあると思うんだ」
「そうかな?うん、できるだけ気づけるようにする。沢渡長官ビデオ集も作ってるから」
・・・いや、そういうことではなくて。