2/14 (火) 21:30 White Ribbon Day

去年までは、White Ribbon Dayなんて、他人事だと思っていた。なのに、今年は、素敵な彼氏が、一緒に過ごそうと言ってくれた。…今でも夢じゃないかと思ってる。

週末の定期デートの帰りに、希は、大きな箱を手渡してくれた。…今日のためのドレス一式。家に帰って開けてみたら、この日の名前の通り、真っ白で可憐なドレスと、靴、鞄、そしてアクセサリー。特にティアラはとても輝いていて、これに合うヘアメイクはどうすればいいのか、あれこれ頭を悩ませた。

…どうかな?うまくできたかな?

予想通り、待ち合わせの時間からは遅れてる。午前中は議会に出ていたし、午後からは、イベントに出席していて…インタビューされていた。

「今日は、大切な方と過ごされるのですか?」

「はい。それを楽しみに、頑張っていますよ」

と。…はぁ~。完璧な王子様スマイルに、情報番組のコメンテーターも、羨ましい~を連発していたけれど、彼は、他の誰でもなく、私に会いに来てくれる。そして、彼もまた素敵な衣装で登場するのかな?

ピンポーン。

部屋のチャイムが鳴った。宮殿の彼の部屋だと、人が来る直前にアナウンスが流れるので心の準備ができるけれど、いきなりそこにいると思うと、ドキドキしてしまう。

「はい」

「ゴメン、待たせたね」

登場した希もまた、真っ白なスーツに、白いリボンで髪を結わえていた。

「よかった。似合ってる」

「うわ。カッコよすぎ」

「そう?ありがとう。深雪も、お姫様みたいだよ」

いや~、恥ずかしい。そして、希が手を取ってくれて、ダイニングスペースへ連れて行ってくれる。

「いろんな深雪が見れて、いいね。イベントは楽しまなきゃ損だってよく分かったよ。今日は二人きりだし、全然緊張しなくていいからね」

いや、緊張するなというのは無理です!White Ribbon Dayに、こんな素敵なホテルの一室で、見目麗しい彼氏と、一緒に食事ができるなんて…。

「メニューは厳選したからね、絶対おいしいよ!」

「…そ、そういう問題ではなくて」

王子様みたいな希がカッコよすぎて、落ち着きません!

「もう、そういうかわいい顔をすると、緊張のねじを緩めたくなっちゃうな」

すると希は、隣から腰をグッと抱き寄せて、深く口づけてきた。…あぁっ。そして、至近距離で、目を見つめて微笑んでくる。…カッコよすぎて、もう。

そのとき、ピンポーンと、チャイムが鳴って、料理が運ばれてきた。加藤さんもいらっしゃるのだから、自制しないと。それにしても、希が言うだけあって、どれもおいしそう。そして、これまたおいしそうに食べている希の顔を見ていると、何だかこっちまで幸せな気分になってくる。…やっぱり、これは夢なんかじゃなくて、希もまた、普通に食事する、普通の人なんだなって。

「あの、これ、私からのプレゼントなんだけど」

食事が進むにつれ、意外にも落ち着いてきた私は、用意してきた白いリボンの包みを取り出す。

「ホントに忙しそうだから、仕事のわずかな間でも元気が出るようにと思って、クッキーを焼いてきたの。これなら、どこでもさっとつまめるかな?と思って」

うわ~、と受け取った希が、顔をほころばせた。

「一つ食べてもいい?」

「どうぞ。気に入ってくれたら、また焼くから」

これおいしいよ!…マズイ、一気に食べてしまいそうだと、予想以上に喜んでくれて、ホントによかった。希は、料理は全然ダメって自分でもよく言ってるし、狙ってみたんだけど、正解だったかな。

「ありがとう。素敵な時間を過ごせてよかった。でも本当は、こんなに綺麗な深雪を、みんなにも見せびらかしたい気分だよ。僕だけが見るなんてもったいない。…でも、独り占めしておきたいっていう気持ちもある」

希は私の手を取って立たせると、ダンスのポーズを取った。

「踊れないよ、私」

「いいよ。一緒に揺れてくれれば、それでいいから」

うわ。グッと抱き寄せられて、密着度が高さにビックリ。…でも、抱き寄せられたら、だんだん落ち着いてきた。もうすっかり慣れた香り、手の温もり、ずっとここにいたいと思ってしまう。

「希、大好きだよ。ずっとそばにいてね」

「俺も。深雪のこと、離したりしないから。…一緒になろう」

うん、と頷くと、さっと抱き上げられた。

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