気丈に振る舞っているのかな・・・最初はそう思った。でも、演技から舞台上の小道具に至るまで事細かにアドバイスしてくれたとき、本当にきらきらと輝いた瞳をしていた。
兼古先輩とは直接連絡を取り合っているけど、清水先輩のことに関しては深雪からの又聞きが多い。その様子からかなり落ち込んでいる姿を想像していただけに、これはまったく意外で、どうなっているのか実際に聞かずにはいられなかった。
合宿はお昼過ぎには解散となって、深雪と共に三人で学食へ。最初に思ったのは、今まではほとんど制服姿しか見ていなかったので、ワンピースにきりりとメイクをされると、女の人って変わるものだな~と。もとから大人びて綺麗なタイプだったけど、・・・何だか大学生には見えない。兼古先輩はこんな清水先輩を知っているのだろうか?それはさておき。
しばらくは大学生活について聞かせてもらったけど、僕としてはあまり時間がなかったので、直接的に聞いてしまった。・・・けど、さほど顔色も変えず、
「メールのやり取りはたまにしてるわよ。でも押し付けがましいことはしない約束。返事が来ないからといって催促はしないこと、とかね」
「じゃあ、会うなんてもってのほかですか?」
そうね、とこれまた平然とコーヒーをすする・・・。
「あの・・・先輩は平気なんですか?」
深雪がおずおずとたずねた。僕と同じ気持ちになっているのだろう。・・・割り切り過ぎてますよ。本当に愛し合っていたのかと心配になるくらいだ。いくら先輩で、少し大人だとしても、・・・僕自身、いくら覚悟しているつもりでも、そこまでは出来ませんよ。
「だって、あんな演技を見せられたら、何も言えないよ」
・・・それだけで、そんなに強くなれますか?
「今はね、純粋に祐輔のファン第一号って感じよ。信じてるかどうかなんて、問題じゃない。彼には彼の人生があって、私には私の人生がある。これでも毎日やることがたくさんあって、新鮮で楽しいのよ。それをとやかく言われても困るように、私も祐輔の生き方にまで口出しする権利、ないと思うから」
え・・・。深雪の人生は僕の人生、そう思っている。そうだよなあ、昨日深雪に一人でも大丈夫みたいな言い方をされたことは、予想外だった。彼女のことは僕が一番知っていると勝手に思い込んでいるところがあるようだ。あれは自分に言い聞かせるように言ったのではなく、本心からなのか・・・?それはそれでやっぱり寂しい気がする。
「いいのよ、私たちのことは心配してくれなくても。これでも十分うまくいっているわ。・・・祐輔はなんて言ってた?」
やっと聞いてきたので、少し安心した。
「・・・俺の考えを理解してくれないはずはない、って」
「それはちょっと自信過剰よね」
・・・なんでこんな風に笑えるんだろう?この余裕はどこから来るんだろう?・・・やっぱり怖くなってきた。深雪も平気になってしまうのだろうか?
・・・ダメだ。何やってるんだ?僕はすでに仕事と両立しているわけだし、出来るだけ会うことのほうを考えなきゃ。深雪のことには、そう悲観的になる必要はないのかもしれない。ただ僕のほうが大変なだけで・・・。