6/13 (火) 23:00 見えない想い

先週は比較的ゆっくりとしたスケジュールだったけど、今週は何かと忙しいらしい。でも隠しておいてもどうせバレてしまうし、探りを入れることで無駄な時間を費やさせるのも申し訳ないので、部屋を訪ねてみた。・・・それでも一応、気持ちの整理をつけるために、丸一日は必要だったりしたのだけど。

・・・さすがの彼も、僕の言うことに対し黙って頷いているだけだった。いつものように根掘り葉掘り聞き出してくるわけではなく、すでに完結したストーリー・・・もう変えられない事実としての結果を、聞く側に徹していた。

「悪かったな、気づいてやれなくて」

昨日顔を合わせたときには、いつもと変わりない素振りをした。だって僕自身がよく分かっていないのに誰かに話すことなんて出来ないし、そんなときに優しい言葉をかけてもらったりしたら、感傷的になり過ぎて余計にややこしくなってしまいそうだったから。

「いいよ。それより、忙しいんだろ?もう帰るから」

「え?あ・・・」

そそくさと立ち上がった僕を彼は反射的に引き止めたけど、僕としてはもう話すことはなかったので、そのまま部屋を後にしてきた。

何もかも想像していたのと違う。恋をしたら会いたくてたまらなくなって、久々の再会では熱い抱擁を交わして、毎日が幸せに満ちて・・・でも嫉妬して、誤解が生まれて、だんだん二人の心が離れて、ケンカして別れて、涙が出て辛くて、やるせなくなる・・・。

沢渡は深雪ちゃんと出逢って、良くも悪くもいろんな新しい感情に襲われるんだと言っていた。僕は・・・何もなかった。ドラマや映画で見たどんな恋愛のパターンにも当てはまらない。やっぱり、これは恋ではなかったようで・・・。

ただ何をするにもやる気が起こらない。今日のレッスンは・・・ヴァイオリンを手にしたけど、そのままケースに戻してしまった。こんな時は何をしてもダメだと思う。

僕は通路から宮殿の様子を眺めていた。反対側の塔を、仕官が歩いていくのが見える。そしてその人が別の人とすれ違い、挨拶をする。・・・透明なガラスの城、僕の心もこんな風に覗くことが出来ればいいのに・・・。

何も見えない、何も感じないんだ・・・。

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