「沢渡さん、少々よろしいですか?」
「・・・ゴメン、後にしてくれる?ここだけ覚えさせて」
今日もまた学校でテストを受けるわけだが、学校へ向かう車の中、まだテスト勉強が終わっていない。
「分かりました。その代わり、今日はまっすぐお戻りください。スケジュールが詰まっておりますので」
「テストが早く終われば、問題ないわけだよね」
「あの・・・、失礼ながら、早く終えられるという前提の元でスケジュールを組んでおりますので・・・」
「分かってるよ、言ってみただけだから」
車の前部座席と後部座席の間は防音壁で遮断することができるが、昨日のことは加藤にはバレているらしかった。でもだからと言って特に何かを言ってくるわけではないあたり、彼は優秀な側近ということになるわけだが、今日は何かと口を出してくる。精一杯の抵抗、というところだろうか。
別室で試験を受ける僕は、他の学生と会うことがない。今日ばかりは深雪に会えなくても仕方がない。でも明後日には会えるのだ。一緒に一夜を明かせるのだ・・・。
「よし、これで期末テストは終了だ。・・・もう、今年は学校に来ないのか?」
最後のテストを提出すると、担任が言った。
「テストの後は自由登校ですからね・・・、加藤がビッシリ仕事を入れているみたいですよ」
「そうか、残念だな」
議会前は仕方ない・・・。
「それなら、一足早いが誕生日プレゼントを渡しておくよ。特別だぞ」
はい?・・・って、これは単なる冬休みの宿題というものでは。
「その代わりと言っては何だが、できれば、クリウスの学生が議会を見学できる機会を設けてくれないか?閣僚として出席する初めての議会だから、大変だとは思うが、こんな機会は滅多にないからな。前向きに考えてくれると嬉しいよ」
それはいいアイディアだと思うので、ぜひとも実現させたい。・・・もうすぐ議会だ。準備は今のところ順調に進んでいるが、それ以外にも、年末年始に両殿下が新婚旅行にお出かけになるので、留守を務めるという仕事もある。
・・・まだ普通の学生はテストを受けている。今日は会えなくてゴメン。あと一日、頑張って。せめて・・・ということで、1年生の校舎の廊下を通って、玄関に向かった。