「え~と、これ教えて」
深雪が指した問題を、僕が読んでいく。
これが学校の宿題ならともかく、家庭教師の先生の宿題だなんて、深雪もよく平然と言えたものだよ。二人で会っている貴重な時間なのに、勉強に費やさなければならないなんてもったいない。でも本当だったら、家庭教師になんて任せたくないよ。俺も一度会ったことがあるけど、せめて女の先生にしてくれよな。他人の気も知らないで。
「そっかぁー、なるほどね。やっぱり希のほうが分かりやすい」
「そう?」
キラリ☆・・・たった一言で簡単に機嫌が直ってしまう俺。
「今のが分かったら、これも解けるんじゃないか?」
「出来るかな?」
「出来るようになれよ」
はーい、と口を尖らせて、式を解いていく。
「ここで今のを使うんだよね」
「そう」
計算を間違えるなよ・・・。ペンが一瞬止まるたびにドキドキしてしまう。おっ!
「どう?合ってる?」
よかった。
「合ってる」
やったぁーと一人で拍手してVサイン。おいおいこの程度でそれじゃ、これからどうするんだよ、と内心思ったものの、
「今のは多分出るから覚えとけよ」
頭をなでなでしてあげた。平和だよな~。数学の問題が一つ解けただけで、こんなに喜ぶなんて。・・・他人のこと言えないか。
「じゃあ、この調子で次のも行ってみよう」